本研究の目的は、スタートアップ企業の都市部における立地パターン、決定要因を解明することにある。近年、スタートアップ企業が大都市圏に集積するという現象が世界中の多くの地域で観察されている。とりわけ、先行研究によればその集積は「都市」全体というよりも特定の「丁目」や「通り」などの微細な地理的なスケールで発生していることも論じられている。ところが、その集積状況及びその決定要因に関する実証研究の成果は十分に蓄積されているとはいいがたい。こうした背景を踏まえて、本研究は東京都に所在するスタートアップ企業の立地データを基に大規模な統計解析を行い、その立地パターンとその決定要因の解明を試みた。まず、東京都23区に所在するスタートアップ企業の立地状況の特徴として、①港区、渋谷区、千代田区、中央区、新宿区などの特定の区に偏在していること、②それらの区の中でも少数の丁目や番地にスタートアップ企業が集積していることが挙げられる。また、統計分析を通じて、①こうした微細な地理的なスケールでの集積が、アーリーステージにあるスタートアップ企業が多く集まる丁目や番地でスタートアップ企業が設立されることで発生していること、②ただし、多くのアーリーステージのスタートアップ企業が集まるエリアで操業すると、次ステージへの移行が遅滞することが示された。
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