研究課題/領域番号 |
20K01880
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
原 拓志 関西大学, 商学部, 教授 (60252756)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 安全マネジメント / 組織マネジメント / 組織間関係 / 技術安全 / MAISアプローチ / 鉄道安全 / 原子力安全 / 日本企業 |
研究実績の概要 |
2022年度も新型コロナウイルス感染症のパンデミックが続く中、二次資料や裁判記録などの一次資料を利用した事故プロセスの事例研究を行った。具体的には東海村JCO臨界事故のプロセスである。事例研究における分析については、事故プロセスに関係する様々な物的存在、行為主体、制度的・構造的要因のそれぞれの側面からの分析と、それら相互の影響関係についての分析とを経て、それらを総合しての考察を行った。その結果については、「MAISアプローチによる東海村JCO臨界事故の分析:臨界に至るまで」(関西大学商学論集67巻4号、2023年3月発行)として公刊した。 そのほか、2022年9月に開催された日本経営学会第96回大会の統一論題報告者として「技術システムの安全とイノベーション」と題して、これまでの鉄道や航空管制、自動運転などの技術システムの安全と組織に関する研究を元としつつ、安全を高めるためのイノベーションの在り方についての講演を行った。その内容は、翌年の日本経営学会誌において公刊される予定である。 そのほか、来年度2023年10月29日に開催される組織学会年次大会においてテーマ・セッション「安全マネジメントと組織論」を企画し、その登壇者である谷口勇仁氏(中京大学)、藤川なつこ氏(神戸大学)、吉野直人氏(西南学院大学)と3回にわたりオンラインや対面での研究ミーティングを開催し、安全マネジメントと組織論についての論点整理や議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの下にありながら、二次資料や裁判記録などの一次資料を活用して東海村JCO臨界事故の詳細な事例分析を実施し、それを論文として公刊したこと、さらにこれまでの研究成果を土台として、経営学における日本の主要学会の一つである日本経営学会の全国大会において統一論題報告者として、研究成果の概要のみならず、今後の経営(学)や社会がイノベーションの新たな方向として取り組むべきことについて明確に示すことができたからである。 また、2023年度においても、次の事例研究の計画も進んでいることや、国際学会での報告も受理され、国内学会でも安全マネジメントと組織の企画が進んでいるなど、これまでの研究成果の発表やフィードバックの獲得も期待されることから、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、6月に開催される国際学会、the 21st Biennial Conference of Society for Philosophy and Technologyにおいて、信楽高原鉄道事故の事例分析について報告することが決まっているほか、2022年度に日本経営学会で報告した内容をブラッシュアップしたものを論文として、日本経営学会誌に掲載されることが決まっている。また9月には、組織学会年次大会において「安全マネジメントと組織論」というセッションを企画しており、国内の安全と組織に関する第一人者といえる研究者を招いてシンポジウム形式で議論する。それに向けて、それらの研究者との意見交換をする研究会を重ねる。 さらに、2023年度においても、MAISアプローチによる臨界発生後の東海村JCO臨界事故プロセスなどの事故事例分析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行に当たって新型コロナウイルス感染症のパンデミック等の理由により研究方法や研究計画の変更をせざるを得ず、それに伴い費目ごとの出費も計画から大幅に乖離し、総額としても差額が発生した。次年度においては物品費、旅費、その他の項目のうち不足が発生した費目で使用する計画である。
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