本研究は、米国スリーエム社の歴史資料を分析することで、「オーガニゼーショナル・ヒストリー」の領域の概念である「オーガニゼーショナル・ビカミング」の理論構築を試みることであった。「オーガニゼーショナル・ビカミング」とは、組織は、所与の存在ではなく、組織というリアルな虚構を構築する営みにこそその本質があるという組織観を体現する概念である。本研究の成果としては、そうした組織観からスリーエム社の歴史に関しての製品・事業構成、組織形態、財務の変化、歴代経営者の公式的な経営方針に関する具体的データに基づいて同社の経営の変化を解釈することが可能となったことをあげることができる。
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