研究課題/領域番号 |
20K01924
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
矢本 成恒 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (10635775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 従業員エンゲージメント / 中小企業 / 生産性 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の中小企業を対象に、従業員エンゲージメントの向上が生産性の向上にどの程度寄与するかを提示することを目的としている。企業の生産性向上に寄与する要因として従業員エンゲージメントを取り上げた研究が近年増加している。そのため、本年度は、これら先行研究調査と仮説形成を行った。インタビュー調査はコロナウィルス蔓延の影響もあり大部分を延期した。そのため、まず文献調査のみによる生産性の説明変数の仮説形成を実施した。 先行研究からは、生産性向上の説明変数として、社員の連帯意識、技術革新への取組度合い、社員教育への注力、一人当たり設備投資の大きさ、現在の仕事の満足度などでモデルが形成されていることが明示された。また、従業員エンゲージメントと組織エンゲージメント(従業員エンゲージメントの集合体系であり、組織として発揮されるエンゲージメント)に分類して、生産性への寄与度を測定することが有効であるという仮説も構築した。さらに、4社の中小企業インタビューを実施し(燃料流通業、鉄鋼業、金属加工業、アクセサリー加工販売業)、生産性向上施策および従業員エンゲージメントやモチベーションのアンケート調査を実施した。このアンケート調査は社員意識調査レベルであるが、従業員エンゲージメントによる生産性向上の説明モデルの仮説を検討するために実施したものである。 なお、付加的ではあるが、コロナが従業員エンゲージメントに与える影響について、テキストマイニングによるトレンド分析およびアンケート調査による従業員エンゲージメントの変化を調査した論文を執筆し、日本開発工学会に「従業員エンゲージメントを高めるリモートワークとは?」というタイトルで査読論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、当該年度はインタビューによる仮説形成やモデル形成を行う予定であったが、コロナ流行のためにスムーズに進まず、経営者のインタビュー以 外の財務数値がコロナの影響をうけているため非常にモデルに使えないデータとなっている。 特に、日本の中小企業の状況について、生産性向上の仮説(モデル)の形成のために、複数の説明変数の中から、従業員エンゲージメントおよび組織エンゲージ メントに関係する要因を特定し、他の要因または説明変数と比較する部分が進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
企業の生産性データについては、特に日本の中小企業がコロナの影響を受けているため、この2年度は使うことができない。そのため、実証手法について少数企業の時系列変化ではなく、多くの企業データをアンケート調査等で取得して共分散構造分析をする方法への変更を検討している。 1.まず中小企業のインタビューや生産性関連情報の取得により、現在の仮説モデルを彫琢する。 2.次に、所属大学のアントレセンターや中小企業診断士協会の診断士の関連企業等へのアンケート調査等を実施する(しかしコロナの影響がなくなった2022年度とする予定である)。この調査は本調査のプレ調査であり、モデルの確認を目的としている。 3.1と2によって仮説モデルを形成する。 4.その後広範なアンケート調査を実施し、帝国データバンク等のデータを購入して、モデルを実証する。 以上のような予定をしている。なお、中小企業のデータはコロナ収束後のデータを利用したいために、研究期間の延長も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビューがコロナのために遅れていて、出張や謝礼が繰り延べられたため。
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