研究課題/領域番号 |
20K01950
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
津田 秀和 愛知学院大学, 経営学部, 教授 (80329599)
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研究分担者 |
小室 達章 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00335001)
横山 恵子 関西大学, 商学部, 教授 (00349325)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NPO / 事業承継 / 創設者シンドローム / アッパーエシュロン / 事業承継計画 / ガバナンス / 組織特性 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,先行研究のレビューとインタビュー調査を実施する予定であったが,新型コロナ感染症拡大の状況をうけ,インタビュー調査を中止し,探索型の定量調査を実施した。 まず,各々の専門領域と関心時に沿って,先行研究のレビューを行った。これらを通じて,NPOの事業承継研究における5つのキーカテゴリーを導出した。この成果の一部を研究論文「NPOの事業承継の成否の規定要因に関わる文献研究」(『関西大学商学論集』第63巻第3号,pp.103-116)としてまとめている。そのキーカテゴリーとは,創設者シンドローム,アッパーエシュロン(リーダー・TMT特性),事業承継計画,ガバナンス,組織特性であった。これらのキーカテゴリーは,NPOの事業承継研究と企業組織を初めとする他の組織における事業承継研究とのレビューから導出された。これら導出されたキーカテゴリーを用いて,その後の調査研究にフレームワークの検討を進めた。本来であれば,インタビュー等の定性研究を実施し,このフレームワークの洗練や修正を行う予定であったが,上述のごとく実施が困難と判断されたため,探索型の定量調査に切り替えた。 この定量調査では,5つのキーカテゴリーに関連するアンケート調査を実施し,その解析を通じてNPOの事業承継に影響を持つ要因の特定化を試みていった。5つのキーカテゴリーの元に仮説を構築し,合計10の仮説を統計分析により検証した。この定量研究の結果については,今後も検討と再検証を通じて,投稿論文などの形でまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた研究のうち,インタビュー調査の実施については新型コロナウィルス感染症拡大状況に鑑み,実施を取りやめたものの,これに代わるものとして,探索型の定量調査を実施できた。定量調査に先立って行われたレビューにより,NPOの事業承継に大きな影響を持つ5つのキーカテゴリーを導出し,論文としてまとめることができた。定量調査においては,探索型の定量調査であるという前提はつくものの,これら5つのキーカテゴリーの影響状況を確認するデータを入手でき,その検討が可能となった。定性調査であるインタビューと,定量調査であるアンケート調査では得られるデータの質は異なるものの,アンケート調査での自由回答記述なども元に,定性的なデータも蓄積しつつある。また,先に行った定量分析の結果から,インタビュー調査の候補についての議論も行い得ている。以上の事から,当初の計画とズレはあるものの,おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,当初の予定では,①事例調査の分析枠組みの精緻化,②事例のパイロット調査を実施予定であった。翌年度の定量分析への橋渡しとなる枠組みを精緻なものとすることを予定していたが,令和2年度に実施されるべきであったインタビュー調査を定量分析に置き換えたことから,実施計画については変更が必要となる。具体的には,令和三年度は,当初の計画であった分析枠組みの精緻化を目的として,インタビュー調査の可能性の模索及び実施とアンケート調査の更なる実施を,新型コロナウィルス感染症拡大状況を確認しつつ実施することとなる。現在の感染症拡大状況について,見通しが立たない状況にあると考えられるが,令和4年度に予定する本格的な定量分析に向けた準備を進める期間として,令和3年度は柔軟に計画を進めたい。また,令和2年度に導出した5つのキーカテゴリーについて,更なるレビューを展開し,より強固な枠組み構築を狙いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度においては,新型コロナウィルス感染症拡大という想定外の状況の中で研究を進めることとなった。令和2年度の計画では,インタビュー調査とそれに関するディスカッションが一定の比重を占め,インタビューに関連するノートパソコンやICレコーダーのような機材と出張旅費を多く見積もっていた。しかしながら,新型コロナウィルス感染症拡大により,このインタビュー調査の実施が困難となり,旅費と物品費の支出に関して,令和3年度以降に持ち越すこととなった。なお,令和3年度においては,アンケート調査とその定量分析を行ったが,比較的に安価に実施されたため,インタビュー調査を実施する時と比して,予算が多く残った。 令和3年度において,感染状況を確認しながらとなるが,インタビュー調査を実施したいと考えており,ここに次年度使用額を充てたいと考えている。具体的には,実施できなかったパイロットインタビューと,枠組み精緻化のためのインタビュー,これに加えて,アンケート調査結果から追加的に確認されるべき事項として浮かび上がってきた事項を確認するためのインタビューを実施したいと考えている。
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