研究課題/領域番号 |
20K02011
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大石 桂一 九州大学, 経済学研究院, 教授 (10284605)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 公会計 / 基準設定 / アウトソース |
研究実績の概要 |
当年度は本研究で掲げた第1の課題、すなわち各国・各機関における公会計基準の設定プロセスを明らかにするための第一歩として、米国における政府会計基準審議会(Governmental Accounting Standards Board: GASB)の創設過程に焦点を合わせて研究を行い、いつ、どのようなときに公会計基準設定の民間へのアウトソースは起こるのかを検討するための手がかりを得た。このGASBの創設は、それまで多様な実務が行われていた州・地方政府の会計基準を統一するという役割を、新たに設立された民間機関が果たすようになったという意味で、公会計基準設定のアウトソースを分析する上での出発点にふさわしいからである。検討の結果、今後の研究に向けて次のようなインプリケーションが得られた。 第1に、米国特有の連邦と地方との関係が、GASBの創設をめぐる議論に大きく影響していた。中央政府と地方政府との関係は、もちろん国ごとに異なる。この点を念頭において、国際的な比較を行わなければならない。第2に、公会計情報の利用者という点では、住民や議会だけでなく、地方債市場への参加者にも着目する必要がある。地方債市場の規模や取引業者・格付機関の力の強さが公会計基準設定のアウトソースと関連性を持っている可能性がある。最後に、アメリカ公認会計士協会(American Institute of Certified Public Accountants: AICPA)がGASB創設において果たした役割の大きさを考えると、会計プロフェッションのあり方に注目して、今後は分析を進めていく必要がある。さしあたり、地方公会計に関する長い伝統を有する英国の勅許公共財務会計協会(Chartered Institute of Public Finance and Accountancy: CIPFA)が分析の対象となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していたオーストラリアでのインタビュー調査が実施できなかった。また、大学図書館も利用できない期間が長く続いたため、文献資料を用いた研究も捗らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当面、出張を伴う調査・研究はできないと思われるため、文献により研究を進めるのが比較的容易な米国と英国における公会計基準設定の枠組みとその変遷について重点的に取り組む。その後、新型コロナウィルス感染の状況をみながら、出張が可能かどうかを判断する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定していた出張ができなかったため。出張が可能な状況になれば実施し、不可能であれば書籍やデータベースを購入する。
|