当年度はおもに、本研究で掲げた第2の課題、すなわち日本において発生主義ベースの公会計情報が地方債市場で活用されているのか否かを確認するという課題に取り組んだ。具体的には公募債のみならず非公募債の価格情報も収録したデータベース(JSPRICE)と契約し、そのうえで、JSPRICEから取得した金利情報を活用して、公会計情報の金利に対する寄与検出を目的とする研究をおこなった。この分析のためには、分析対象銘柄の利回りとベンチマークとなる国債等の利回りとの差(スプレッド)を計算したうえで、スプレッドと財務情報等の説明変数等を組み合わせたデータベースを構築する地道な作業が必要があるが、当年度において、スプレッド計算・データベースの構築をほぼ完了させることができた。しかし、本格的な分析を実施するまでには至っておらず、現時点ではまだ明確な結果は得られていない。そのため、成果を公表することはできなかったが、次年度中には当該データベースを活用した実証分析を通じて、学会報告・論文投稿等の具体的な研究成果の創出ができる見込みである。 本研究で掲げた第1の課題、すなわち公会計基準設定のアウトソースに関しては、新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた海外でのインタビュー調査はまったく実施できなかったため、文献調査を中心に研究を進めた。本課題についても研究成果を公表できる段階にはまだないが、次年度中には英国勅許公共財務会計協会(Chartered Institute of Public Finance and Accountancy: CIPFA)に基準設定が事実上アウトソースされるに至った経緯について成果を発表できる見込みである。
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