研究課題/領域番号 |
20K02066
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
深谷 裕 北九州市立大学, 地域戦略研究所, 教授 (60435732)
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研究分担者 |
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
坂本 毅啓 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (30353048)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 刑務所出所者 / 地域生活定着支援センター / 連携 / 司法福祉 / 当事者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、刑務所出所者(以下、出所者)の地域生活の継続を可能にする包摂的地域の具体的態様と、そのような地域社会をつくりあげていく条件と方法、および包摂型地域の形成を阻む要因について実証的に明らかにすることである。 方法としては、①当事者へのインタビューおよび、②支援者へのインタビュー、さらに③住民を対象としたアンケート調査を採用する。
2022年度は、刑務所出所者等の地域生活継続を支援している3つの団体の職員(6名)への聞き取り調査を行った(①②)。なお、そのうち一つの団体では、出所者(3名)が職員となって支援にあたっていた。これらの調査を通して地域生活の継続の条件について考察した。当該年度の聞き取り対象は、高齢者や障害者など出所後に福祉的支援が必要となっている事例に対応している団体が中心であり、司法、福祉、医療の連携のあり方とその課題について、浮き彫りにすることができた。さらに、受刑の経験や出所後の経験を他の出所者への支援に生かした支援形態も確認することができた。団体の中には周辺の商店や住民に積極的に働きかけて、出所者の日常生活が円滑に進められるよう関係構築に向けた工夫をしているところも見られた。 なお、地域生活定着支援センターへの聞き取りでは活動内容や支援実績をうかがうととともに、インタビュー対象者の紹介等、調査への協力を依頼した。 また、③については2021年に学生および一般住民を対象に前後比較介入研究を行ったので、これらの調査から得られたデータの統計解析を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度から新型コロナウィルスの影響により、対面でのインタビューや遠方に足を運んでのインタビューの実施が困難だったことに加え、支援者らが依然として感染予防や 対策に労力を費やさねばならない状況にあり、調査実施の調整が難航した。そのため、研究全体の進捗が後ろ倒しになっている。 また、研究の一環として海外調査を予定しているが、2022年度までは出入国に一定の制約があり、実施が困難な状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
当事者へのインタビュー調査(①)および支援者を対象とした調査(②)については、継続して実施し、随時データ分析を進める。 また、2022年度までに終了している学生および一般住民を対象に行なった前後比較介入研究の統計解析の結果を用いて、出所者に対する認識についての論文化を進める(③)。加えて、民生委員への社会的距離のアンケートを実施する。具体的には、8月から9月にアンケートを実施、回収、データ入力を行う。集計、統計解析は10月~11月に終わらせる。
さらに、今年度は新型コロナウィルスの影響により難航していた海外調査を実施する予定である(カナダおよびイギリス)。現地の出所者支援団体からの協力を得て、司法と福祉との連携形態、地域統合に向けた工夫、インフォーマルサポートとの関係性等を明らかにしていく。加えて、これまでの聞き取り調査より、受刑経験者が出所者支援において効果的な役割を担うことが示唆されているため、当事者活動の国際比較を目的に諸外国において受刑経験者が果たしている役割についてもデータを収集する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、本研究開始当初から研究全体の実施が後ろ倒しになっており、2022年度終了時点で未実施の研究調査があるため翌年度に持ち越す必要が生じた。 2023年度は、これまで海外渡航が制限されており実施が困難であった海外調査に取り組む。そのため、助成金の一部を調査者の交通費や滞在費、現地協力者への謝金に費やす予定である。 また、国内調査についても継続して調査を行う。具体的には当事者や支援者を対象とした聞き取りのための謝金、交通費、逐語録作成費に使用する。また、民生委員を対象としたアンケート調査のための調査票の印刷、データ収集、データ整理等のために、助成金を使用する予定である。
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