研究課題/領域番号 |
20K02093
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
笠井 賢紀 慶應義塾大学, 法学部(三田), 講師 (80572031)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 生活史 / 家屋 / 住み継ぎ / 住民自治 |
研究実績の概要 |
本研究は、開始時に記した概要同様に、地域性・共同性に注目しながら家屋を取り巻く生活史調査の方法論構築を目指している。すなわち、個人史と地域社会史の媒介として、家屋史を取り入れようという試みである。 2020年度は当初予定通り、本研究の一環として当該年度に設立されたNPO法人くらすむ滋賀との共同事業「住み継ぐまちづくりの実践と検証」(2020年度日本生活学会生活学プロジェクト採択)を実施した。同事業においては滋賀県栗東市の旧街道沿い集落に古くから住む5世帯に2020年10月~12月に掛けて聞き取りを中心とする調査を行った。インタビューは録音し、19万5千字の文字に起こした。 合わせて、2019年度に行った類似の4世帯調査についても、遡って17万8千字の文字に起こした。これらの調査にあたっては、とりわけ家屋に関する調査であるため現地取材が望ましいと考えられたが、コロナ禍のため叶わなかった。そのため、くらすむ滋賀事務局が現地での予備取材、資料収集を担当した。研究代表者はWeb会議システムを用いて対象宅にいる対象者に取材を行った。その際も事務局が通信端末を持参して取材に同席した。 遠隔取材自体は成功裡に進んだものの、研究代表者が直接に資料収集や取材を行えないことから、当初予定の研究が実現できない可能性が生じたため、当初予定になかった次の2点を行った。すなわち、(1)GIS技術の習得開始および研究メンバーの確保により調査方法論として空間的情報を扱うための準備作業を進めた、(2)対象地として同じ滋賀県だが1970年代に造成されたニュータウンを一つ選定し浅い家屋史しかない地域における「住み継ぎ」課題に対応するための調査を始めた。(2)については当該ニュータウン造成当初からの自治会報を中心とする会報類の収集を完了しデータベース化を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」記載通り、当初計画以上の調査や調査準備に取り組めた一方で、論文や口頭発表等のアウトプットに至る成果は限定的だった。
|
今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」記載のGISを用いた研究として、立命館大学アート・リサーチセンター日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点/2021年度国際共同研究(個別テーマ型)「口述史と資料に基づく生活空間のGISデータベース化:滋賀県栗東市の旧街道筋集落を中心に」に採択され、本科研費に関する共同研究として実施する。 また、本研究の当初計画については今後もコロナ禍で実施が困難な状況が続くと想定されるため、現地調査の方法を再検討する。合わせて、論文等のアウトプットを充実させたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度予算の用途は、コロナ禍のため大幅な変更を余儀なくされた。当初計画で最も大きな額であった旅費はゼロとなり、代わりに他の用途に用いた。そのため、当初計画通りの予算配分とならず、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は人件費に追加して充てる予定である。
|