研究課題/領域番号 |
20K02144
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
堀田 恭子 立正大学, 文学部, 教授 (20325674)
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研究分担者 |
宇田 和子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90733551) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 食品公害 / カネミ油症 / 台湾油症 |
研究実績の概要 |
今年度はカネミ油症に関しては、昨年度から引き続き厚労省カネミ油症健康実態調査の分析考察を実施した。最新のデータを取り込みつつ、9年間の健康実態調査から油症の認定患者像を考察した。また厚労省は次世代調査も実施したため、それらに関する資料等の収集も実施した。今回は身体的な症状に着目しつつ、社会的、精神面に焦点をあて経年で見た。当事者の7割以上が長年にわたってストレスを抱えていることがわかった。ストレス源は「自分の病気や介護」が常に高く、2番目に選択されているのは2019年以降、収入という経済的な心配事より「家族の病気や介護」であった。高齢化社会を迎え老老介護の問題は存在し続けている。しかし油症患者の場合、食を経由しているため当然家族が患者の可能性もあり、油症患者が高齢化した場合、どのような状態になるのかは、当事者が食べた時期によっても未知の部分があろう。そこは通常の加齢による介護を含む高齢化の問題とは異なる側面を持つことも推測できる。 多少の変化があった項目は受療領券を利用せずに受診する人々が減少していたことであった。使用することで患者とわかってしまうデメリットはあるが、使用できる医療機関が増えたことも、その減少の要因と考えられる。 他方、台湾油症においては、事件発生当初の新聞記事等の収集および読み込み、支援者運動である台湾油症受害者支持協会(以下、協会)の動きを調べた。協会の事務局が、借りていたところとの契約がきれ、2022年現在、事務所を持たない団体となっていることが確認された。その他台湾油症に対する救済政策構築のための法学的アプローチの論文(中文)と環境医学的アプローチの論文(英文)を入手し、その読み込みも実施した。同時に日台油症の比較研究の論文等の収集並びに読み込み、九大油症研究班による多数の調査研究論文の中から健康実態調査に関する被害にかかわる論文等の収集も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も台湾での現地調査はできず、日本においてもコロナ状況がなかなか安定しないため、現地調査を見送った。そのため、日本と台湾における文献・資料・データ等の収集を中心とし、資料等の読み込み及び分析考察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は三ヶ月間、台湾において現地調査が可能となったため、10年前に実施した実態との比較のためにも、被害の実態調査並びに、被害者運動・支援者運動・救済政策に関して、調査研究を実施予定である。 比較して日本での支援者運動・救済政策もさらに資料収集並びに関係各主体に対する聞き取り調査を実施して調査研究を進めていく。当初は量的調査の調査設計を予定していたが、他の複数主体が被害者に対して量的調査を実施しているため、対象者に対する調査負荷を考慮し、まずはそれらの資料を入手し、読み込んだ上で、方向性を探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は短期間ではあるが台湾現地に滞在するため、台北・台中ほかに居住する油症患者へのヒアリング、支援者団体の理事等や、行政各機関に対するヒアリング調査を実施予定である。さらに現地での大学図書館や国立図書館等で台湾油症に関する資料収集も実施予定である。そのため、ヒアリング調査に関する録音機器、通訳代や資料コピー代、また交通費等の費用が必要となる。 そのほかに国内での被害者団体に関する資料収集、支援団体等の関連資料収集の継続、カネミ油症患者への被害者ヒアリング等の実施を予定している考えているため、それらに関する費用も必要である。
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