研究課題/領域番号 |
20K02185
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
梅田 直美 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (60618875)
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研究分担者 |
佐藤 由美 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (70445047)
川田 菜穂子 大分大学, 教育学部, 准教授 (90608267)
木曽 陽子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80735209)
林 尚之 立命館大学, 教養教育センター, 授業担当講師 (20733273)
上田 有里奈 奈良県立大学, 地域創造学部, 研究員 (20782600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ / ソーシャルビジネス / 家族 / 自律性 / 当事者性 / ケア |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、研究会の開催を通じて中間成果と論点の共有を図りつつも、各研究者が分担研究を進めた。 理論研究としては、昨年度抽出した論点(「自律的コミュニティ」概念の基礎づけ、自律性と共同性および「家族」的な親密性をめぐる日本固有の課題等)をふまえた上で、本年度は、当事者性について、関連諸分野の先行研究等をふまえ検討した。また、近年は国内においても近代の家族・ケア・労働システムのオルタナティブに関する議論や実践が、共同性・コモンの再生と結び付けられながら活発に論じられ試行されている点に注目し、それらの可能性と課題を本研究課題と関連づけながら検討した。 事例研究としては、本年度もコロナ禍の影響により大人数での共同調査は実施できなかったものの、個別の事例調査(対面での聞き取り・訪問調査およびオンライン調査)を進めるとともに、共同調査の対象事例についてのデータ・資料収集、事前ヒアリング等を行い調査設計・準備を進めた。具体的には、海外事例に関しては、ドイツの多世代ハウスの活動動向に関する統計データや活動報告書の分析を中心に、他の欧州諸国も比較対象にしながら社会的孤立への対応としての非血縁連帯社会構築の取り組み事例の調査・考察を行った。国内事例では、自身の不登校・ひきこもりの経験をふまえ様々な生きづらさを抱える人々の生活課題に対応する起業者への聞き取り調査、農山村に移住して起業し自律的なコミュニティ形成が進められている事例の調査、若者の自立支援住宅、シェアハウスの事例調査などを行った。また、コロナ禍の影響を受けてオンライン上の様々なケア支援の取り組みが生じていることに着目し、特にSNSを通したオンライン上のケア支援コミュニティに関する調査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度もコロナ禍の影響により、予定していた現地調査の多くが実施困難な状況となった。昨年度と同様に、本研究での調査フィールドは、多世代かつ不特定多数者が集う場や、自宅等で行っている個人事業のソーシャルビジネスのため、その多くが中断あるいは形態を変えて実施しているか、外部者の見学・調査等の受け入れを停止していたためである。 しかし、オンラインでの聞き取り調査や密を避けた個別・少人数での事例調査の方法論的検討が昨年度よりも進み、かつ、それらの調査を現場の方々に応じていただける機会が拡大したことから、本年度は、昨年度よりも、一部調査の実施と今後の調査企画準備を順調に進めることができた。また、理論研究にも予定以上に時間を費やすことが出来たこと、さらに、コロナ禍のなかで、つながりのあり方やケア・労働のあり方をめぐる議論が活発化したことにより、本研究課題において当初は想定しえなかった新たな重要論点や研究ネットワークの可能性を拓くことが出来た。とはいえ、予定していた内容通りの共同現地観察調査は今年度も行えなかったことから、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、共同および個別の現地調査を重点的に実施する。また、それらの現地調査で得られる成果と、これまでの理論研究、文献調査・オンライン調査等で得られた成果を集約して本研究課題における問いについて包括的に検討する。さらに、本研究を通じて得られる知見を、研究者だけでなく実践家らも参加する研究会・シンポジウムで公表して議論する。 なお、先述のとおり、近年においては国内でも近代的な家族・ケアシステム、労働システム、居住システムのオルタナティブに関する議論と実践が活発化している。特に、経済雇用環境の劇的な変化、人口減少、環境問題と持続可能性などの社会変化のなかで、地域に根差し、共同性・コモンを重視したオルタナティブな家族・ケア・労働のあり方を探る動きは、国際的にも国内でも著しい。この動向は、本研究課題にも深く関連する重要なものであるため、今後の理論研究・事例研究の推進においては、それらの研究を行う研究者ネットワークとも連携を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた現地調査の一部が新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施できなかったため、令和4年度に延期した。よって、令和4年度に実施するフィールド調査により使用する計画である。
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