研究課題/領域番号 |
20K02353
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
落合 信寿 産業医科大学, 医学部, 助教 (90386649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 安全色 / 色覚 / リスク認知 / 高齢者 / 再現性 |
研究実績の概要 |
日本産業規格(JIS)の安全色は、これまで国際規格ISOとの整合化が図られていたが、2018年改正の新規格では、色覚バリアフリーに対応した独自のユニバーサルデザインカラーを採用したため、国際規格と一致しなくなった。JIS新規格安全色は色の識別性の評価に基づき選定されたが、他の評価指標による検討はなされず、安全色として有効に機能するかどうか不明である。本研究はJIS旧規格安全色の有効性を検討した落合ら(2005)の既往研究を基に、色覚の多様性を考慮したJIS新規格安全色の有効性をリスク認知の観点から検証するものである。 本年度は予備的研究として、重篤な眼疾患のない62~83歳の高齢者22名を対象に、高齢者における安全色のリスク認知の再現性について検討した。JIS Z 9103に規定された新旧安全色の色票に対する潜在危険度を、既往研究と同一の尺度を用いて評価した。再テスト法を適用して、約4週間の期間をおいて2回の評価を実施した。 リスク認知の再現性を示す指標として級内相関係数(ICC)を算出した結果、全データのICCは0.65であった。Cicchetti et al(1981)の基準ではICCが良好(good)な範囲(0.60~0.74)に含まれていることから、高齢者における安全色のリスク認知は、ある程度高い再現性を有していると考えられる。一方、新旧安全色の色別にICCを比較検討した結果、赤における旧規格と新規格の安全色の再現性に顕著な差がみられた。特に新規格の赤はICCが最も低く、再現性が非常に低いことが明らかになった。 安全色の機能として「危険」「注意警告」等の意味に対応した一定レベルの危険感を想起させることが要求されるが、研究結果から、新規格の赤は一定の危険感を伝達することが難しいと考えられる。新規格の赤の有効性については、多様な色覚特性を考慮し、更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究を推進するにあたり必要な設備備品を海外から調達する計画であったが、想定外の事象により海外からの設備備品の調達にかなりの期間を費やした事、研究代表者が急病のため入院加療を要したこと等の事情により、研究の進捗に遅れが生じた。また、コロナ禍によって生じた大学施設の入構制限等の影響により、初年度に計画していた正常色覚を有する若年者を対象とする調査研究が実施できず、当初計画の段階まで研究を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は多様な色覚特性を有する人々を対象群としているが、コロナ禍において対象者の確保が難しい状況下にある。当初の研究計画では年度単位で対象群別に研究を進める予定であったが、複数の対象群において同時並行的に研究を進めることで、研究期間全体を通じて必要十分な対象者数を確保できるようにする方策を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により旅費等の支出がなかったため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、本年度進める予定であった対象者への謝金、及び成果発表旅費等に使用する計画である。
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