日本産業規格(JIS)の安全色は、2018年の改正で色覚バリアフリーに対応した新しい色に変更された。本研究は、多様な色覚特性を対象に、2018年改正の新規格と2005年改正の旧規格間での安全色に対するリスク認知の差異を比較し、新規格安全色の有効性を検証した。 2023年度は、前年度と同様、新旧安全色のリスク認知について、先天赤緑異常と正常色覚を対象に調査を継続した。JIS Z 9103の新規格と旧規格の安全色12色・対比色2色の色票に対する潜在危険度評価、色名による色同定、カラーチャートを用いた色票の色同定、種々の色覚検査を実施した。最終的に、先天赤緑異常21名、正常色覚22名より調査データを収集した。 色覚検査の結果、先天赤緑異常21名のうち、1型は6名、2型は15名で、強度異常は13名であった。潜在危険度評価は、安全色、規格、色覚の3要因分散分析を行った結果、安全色と規格の交互作用が有意であった。色覚の要因は、主効果、交互作用ともに有意ではなかった。下位検定の結果、赤は旧規格のほうが新規格よりも危険度が高かった。旧規格の赤は他の5色よりも危険度が高かったが、新規格の赤は黄、赤紫との間で危険度の差が認められなかった。次に、先天赤緑異常群における赤の危険度評価に対して、規格、異常の型、異常の程度の3要因分散分析を行った。その結果、規格の主効果のみが有意であり、異常の型、異常の程度は主効果、交互作用ともに有意でなかった。 これらの結果から、高齢者と同様、先天色覚異常、正常色覚ともに、赤は新規格色の危険度が顕著に低く、かつ黄の危険度と差がなかった。先天赤緑異常群では、異常の型や程度が赤の危険度評価に及ぼす影響は認められなかった。これより、新規格の赤は、色覚異常の有無や異常の様態にかかわらず、旧規格色よりも高レベルの危険感の伝達が困難なことが明らかになった。
|