研究課題/領域番号 |
20K02442
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
澤山 利広 関西大学, 国際部, 教授 (90388885)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際協力 / サービスラーニング / 青年海外協力隊 / 教育協力 / 教員離職 / SDGs / ウィズコロナ / ユニバーサルデザイン |
研究実績の概要 |
2021年3月に『関西大学高等教育研究12』に発表した「SDGs社会における任意団体に関する考察-イノベーター理論とキャズム理論を参考にしたPhilippine Children’s Projectの時系列観察から-」では、SDGsの目標達成に果たすパートナーシップについて検討するために、本基盤研究の国際協力サービスラーニング(ISL)研究のコンテンツ提供先であるPhilippine Children’s Project (PCP)を例に、サービス需要側のメンバーから供給側のコアスタッフへの転換による活動の拡大再生産のサイクルについて論考した。初期市場からメインストリーム市場への波及には、クラックとキャズムの克服が必須である。地域レベルでは国際機関や政府に先立ち、まずはアーリーアダプター的機能を果たし得るNPO・NGOや住民に近い地方自治体、そして学生が集う高等教育機関が、任意団体の可能性を見極め、他団体の範となるような公益拡大に資する協働事例の発信に努める必要性を示した。 また、関西大学で2020年12月16日に開催された国際協力ガイダンス『シンSDGsの學び方~Society5.0 for SDGs with COVID-19~』では、DXを活用したアフターコロナ/ウィズコロナ時代のISLの可能性を示し、2021年1月18日に開催された国際教育セミナー『10年後の世界、10年後の自分-SDGsと現代社会-』では、ユネスコバンコク事務所をオンラインで結び、ISLによる派遣元学生の教育的効果と派遣先の裨益に関する議論の進行役を務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、青年海外協力隊(JOCV)に参加経験のある教員(JV教員)のためのキャリア形成サポートシステム(C-JAT)に関する資料作成(JOCV研究)と、汎用可能な国際協力サービスラーニング(ISL)のコンテンツの探求(ISL研究)からなっている。海外と国内を架橋する実践的研究であるため、移動や活動が制限されるコロナ禍の影響を大きく受けている。 JOCV研究の手法は、原則、対面インタビューによる質的調査と質問紙による数量的調査の併用である。前者については数件の調査にとどまるが、インフォーマントからは厳しい労働環境下での奮闘と、離職に至る数値には表れにくい葛藤や機微をうかがうことができた。後者については、「JICAボランティアOB・OG教員・教育研究会等(以下、教員OV会)」の有志の協力を得て、質問紙の内容を検討している。 ISL研究では、JOCVの任期中のパフォーマンスにヒントを得ながら、フィリピン共和国、カンボジア王国、ブータン王国での活動において試行錯誤を繰り返す予定であった。しかしながら、2020年度はJOCVの現地活動が中断しており、本研究と関連する関西大学地域連携事業「SDGs Cycle Project in the Philippines and Cambodia」も中止を余儀なくされたことから、SDGs概念にも通じるユニバーサルデザインに則ったプログラムづくりに進捗は見られない。 ブータンについては、本学と現地のRoyal Thimphu Collegeとのオンラインでの共修プログラムの参観に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
JOCV研究については、質的調査のサンプルをオンラインも活用して蓄積する。全サンプルの中で各個別ケースを位置づけるために数量的指標を用いた質問紙調査を行う。質的調査から推察される傾向を基に、JOCV任期中の前・中・後期別の状況や帰国後のキャリア等を問う質問紙を作成する。質問紙は、より多くの回答を得るためにインターネットでも公開する。 併せてJV教員を取り巻く人々からの情報を収集する。昨今の開発途上国の教育環境や教授法には、後発性優位が見られることから、JV教員が派遣前に獲得しておきたい移転技術を知るために、現役隊員の配属先のカウンターパートや管理職等からもヒアリングを行う。また、JV教員を送り出した職場の管理職や教育委員会関係者からは、帰国後のJV教員の活用についてのビジョンを聞き取り、当人が持つキャリア・イメージとの齟齬を見る。 ISL研究については、海外活動の再開を期待しつつも、フィリピンとカンボジアで取り組んできた教育協力や平和教育を引き継ぐ代替活動として、沖縄県今帰仁村や北海道大空町の公設塾においてオンラインとスクーリング(現地に赴いての教育協力活動)から成るハイブリットプログラムを実施する。その実施過程で質的分析とルーブリック評価を行い、そこから浮かび上がる教育効果を高めるための工夫をPDCAサイクルに組み入れ、トライ&エラーを繰り返すことで、ウィズコロナの状況下でも汎用可能なSLプログラムのコンテンツの提示を試みる。 質的分析のデータは、それぞれのプロジェクトの参加者を対象としたSLの一連のレディネス、現地活動、フォローアップのプロセス毎の半構造化インタビューの内容と、現地活動中に各自が作成するデブリーフィングシート(DS)をまとめたポートフォリオである。ルーブリック評価では、参加者が派遣前と派遣後に作成するルーブリック表の比較によって項目毎の効果・効用を数値化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために国内外の出張を行わなかった。主に、旅費に充てたい。
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