研究課題/領域番号 |
20K02446
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研究機関 | 九州女子短期大学 |
研究代表者 |
宮嶋 晴子 九州女子短期大学, 子ども健康学科, 教授 (20598122)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生活困難を抱える親子 / 学習主体形成 / 乳幼児期からの地域活動参加 / 行動変容 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、学術論文1本を発表した。前科研から継続して実施している本科研の調査研究5年間の取り組みの成果をまとめた内容である。 論文のテーマは、「生活困難を抱えた子育て家庭の幼児が地域活動に参加する可能性-公営団地で試みた実践事例をもとにー」であり、今回の論文では、科研テーマの調査対象である乳幼児期から支援実践である地域活動に参加した「子ども」の主体形成に関する論文を執筆した。 具体的には、参加開始当時3歳5か月のSちゃん(シングルマザーの母親が精神疾患で祖母宅で暮らしているが、ネグレクト気味の家庭環境、また就学前教育に行っておらず、生活習慣の未獲得、また人いびつな間関係で人との関りが難しい)が、毎月1回の「団地子育てサロン」に参加することによって、生活困難を抱えた子育て家庭の幼児が地域活動に参加することによって、①家の外に幼児で行き来できる回路が開いたこと、②欠乏欲求充足のスタートラインに立てたこと、③生活現実の延長上から乳幼児期にふさわしい生活や文化に出会えたこと、などささやかとはいえ、地域活動参加による幼児の主体形成プロセスを実証的研究の成果としてとらえることが出来た。 途中、児童相談所の一時保護などを経て、右肩上がりの主体形成プロセスとはいいがたいが、現在、小学3年生になったSちゃんは、乳幼児の地域活動参加による人との関りや体験を土台に、学童期を積極的に過ごしている姿が見受けられる。 それらの、成果を、基礎教育保障学会の紀要に投稿し、査読後、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度のコロナウィルス感染拡大防止のため、前科研から調査研究実践の中心的取り組みとして毎月1回実施してきた「団地子育てサロン」が2020年2月より実施出来ない状況が続いているため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年5月10日現在、コロナウィルス感染拡大が止まらず、福岡県においても緊急事態宣言3回目が発出されている状況から、2020年度に引き続き、調査研究実践の中心的取り組みを毎月実施していく目途はたっていない。しかし、本科研の研究テーマである「生活困難を抱えた親子の地域活動参加における学習主体形成」をあきからにすることは変更する予定はない。 そこで、主催者や支援者などを交えた研究会の開催、また、アンケート調査の実施、調査地の団地の集会所やグラウンドなどに出向いた参与観察、団地関係者、子育て当事者への聞き取り調査など、当初の研究計画書にある調査方法を一部変更するなどして、本科研の研究目的を達成していくことを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に伴い、調査地に出向いて研究することが少なかったため、調査旅費が必要なかった。また、参加を予定していた学会研究大会も中止やオンライン開催に変更されたため、学会参加費として計上していた旅費の使用も必要なかった。主にこのような理由から、186,659円を次年度使用額として残した。 次年度使用計画としては、今後もウィルス感染拡大で当初予定していた月1回の調査が出来なくなる可能性があるため、今年度からは、人との接触をさける研究方法に一部変更(具多的には、参与観察調査、アンケート調査、オンラインなどによる聞き取り調査など)し、そのデータ入力などの人件費として研究費を活用する。
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