研究課題/領域番号 |
20K02490
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
恒吉 紀寿 北九州市立大学, 文学部, 准教授 (20285456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子育て / 子ども / NPO |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染拡大により、子ども・子育て関係団体は、その活動や活動するリーダー・スタッフ、対象となる会員や当事者の参加状況に影響を受けることになった。公的な活動としてプログラムを展開していた団体(行政からの委託)は、公共施設や自治体の方針に沿って、緊急事態宣言の中では一般的な活動の休止が多かった。その一方で、民間として独自に活動を行っている活動や団体は、活動を工夫し継続していた。また、地域団体の活動も、子ども会など休止する団体が多かった。 公共サービスや地域組織が休止しがちであるのに対し、NPOなど志縁でつながったり、つなげようとする活動は、感染予防対策を行いながらできる活動を検討し継続していた。つまり、子ども・子育ての活動をサービスと捉える意識が強ければ休止、「孤立の予防」や「学びや成長のために必要」と理解している意識が強ければ、活動継続を模索する傾向が出ている。本研究の対象としている事例は、後者の経験によって団体を結成・継続し、活動や学習を編成しているため、とりわけ活動の工夫が行われていた。会員やメンバーの広がり、事業の参加者については、コロナ禍であるため、拡大・維持・縮小と活動内容に応じて影響を受けている。 子どもを対象とする活動は一般募集型が縮小、会員型の活動は維持・拡大の傾向があり、子育てを内容とする活動は、維持・縮小の傾向が生じている。活動にあたっては、新型コロナ感染症対策を学習し、予防対策を講じながらの活動になっていて、広がりの面では停滞することになっているが、何が大切な活動であるかを点検し、見つめなおす機会になっている。対象とした事例が、緊急事態宣言が出された地域の状況なので全国状況と同じ傾向であるのか確認する必要はあるが、リーダー層の学びの経験と当事者意識を重視する視点によって、コロナ禍においても学びを再編成していく動向を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染拡大により、当初計画していたアクションリサーチの現地調査を実施することができなかった。居住地(福岡)の県外移動自粛状況や、調査対象地(関東や関西)の緊急事態宣言によって年度内に計画を何度か立てたが感染拡大予防のため県境移動を自粛したためである。そこで、できる調査や検討に計画を変更した。通信機器を用いてのインタビューや活動状況などの情報を得ることはできた。 それを踏まえて、新型コロナ感染前の当初計画と比べて、計画通りの調査ができなかったが、その他の方法を用いて調査に向けた準備と内容の把握はできたため「おおむね順調」を自己評価した。 現状でできる調査や研究について、研究目的に即して、近距離内の実践に目を向け、インタビュー調査を実施した。調査の内容については、民間団体の開催するシンポジウムで発表した。現在、論文としてまとめるために継続調査を行っている。 以上のように、研究対象の主軸とする2つの事例は、具体的活動を参与観察するには至らなかったが、比較検証事例として調査対象にする事例についてのインタビューや予備調査は行うことができた。ただし、計画では「メンバーの拡大がなされている団体」としていたが、コロナ禍であり、メンバーの拡大、維持、縮小と違いが生じていた。そのことの位置づけを研究枠組みで考慮する必要がある考え、比較検証事例については「コロナ禍においても活動が継続されている事例」という視点を加え、修正して研究分析に活かしていこうと考えている。また、年度の調査としては論文にまとめるに至っていないが、親の学びの編成に関わる、当事者の子どもへの期待と子どものキャリア形成への地域づくりの影響について論文としてまとめた。今後、主軸となる事例の調査実施と、検証対象の事例の継続・本調査を実施しながら、理論枠組みの構築についても検討を行い、中間論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍での調査時期を伺いながらとなるが、軸とする事例対象のアクションリサーチを実施する計画である。初年度からの予定が、活動状況を把握するにとどまったため、2年度とあわせて、コロナ以前、コロナ禍(今後)を意識しながら、リーダー層が、どのような当事者の学びの編成をしようとしているのか、これまでの蓄積をどのように総括し転換しようとしているのか継続的に調査を行っていく。 また、比較対象事例と予定していた事例の調査は、県内事例に限られてしまったが、調査を行ったため、これらの事例についても継続調査を行っていく。これについては、先に論文としてまとめる。そのため、軸とする事例を中心に比較対照する事例という当初の研究計画を修正し、活動内容や団体組織による分類として研究を行っていくことにする。ただし、計画の進捗具合によっては、再び当初の計画に沿って研究をまとめることを検討する。 理論枠組みにかかわっては、対象としている実践においてコロナ禍の影響を考慮する必要が生じ、事業展開における感染予防対策は避けられないが感染症対策の事業と捉えることに終始しないよう調査や分析の際には注意する。コロナ禍においても編成しようとする学びについて、その展開をとらえる理論枠組みの検討についても、調査と並行してすすめていく。 計画の修正を余儀なくされたことはあるが、調査対象の、コロナ禍での活動継続の混乱や試行錯誤を経て、編成する活動が形をつくりつつある今年度から来年度の活動展開が、これまでの活動を総括し展開させる時期として、研究課題へ接近しやすくなった条件でもあると考える。 そのため、調査の個人情報保護への配慮に加えて、調査による健康不安を感じることがないよう感染予防対策を十分にとって研究調査を実施していくことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大によって、県外への移動が制限され、また緊急事態宣言など調査対象地の状況も踏まえ、県外調査を実施することができなかったため、当初予定していた調査や発表など、旅費や人件費・謝金に関わる支出をすることができず、予算残額が大きくなった。年度内に調査を実施するよう、日程を最後まで計画していたため、残額予算執行を抑えたことから、繰り越しする判断をした。 今後の使用計画については、前年度の調査計画を実施することと、あわせて今年度の調査の実施も実施する。また、調査のデータ分析のためにパソコンの購入を計画する。文献や資料などの購入については、予定していたものだけでなく、コロナ禍の影響を研究対象の実践が受けているため、コロナ禍における理論枠組みの検証を行うために、予定を広げ収集していくことを計画する。 研究報告を予定していた学会などがオンライン開催になるなど、発表や関係研究に関する情報収集が当初の旅費の予定額より少なくなる可能性もあるので、執行額を確認しながら、調査対象先での調査結果の確認や説明の際に使用するポータブルプロジェクター等の購入も検討する。
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