研究課題/領域番号 |
20K02555
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
本多 正人 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (90282623)
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研究分担者 |
風岡 治 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10838147)
高橋 興 青森中央学院大学, 経営法学部, 特任教授 (40458170)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育行政空間 / 高校改革 / 連携型中高一貫教育 / コミュニティ・スクール |
研究実績の概要 |
当初計画においては,本研究を探索的な定性的事例研究と位置づけており,地方創生政策が始まって以降こうした文脈で進められるようになった高校改革の少数事例を深く掘り下げて、収集した資料整理と分析をすすめる予定であった。具体的には行政・学校の教職員や学校運営協議会委員等へのインタビューや統計資料等(審議会,検討委員会等の行政文書資料,地元メディアの記事等を含む)を用いて,教育行政空間の変容に至るプロセスを把握し,それぞれのケースの相互比較により類似点や相違点などのマトリクスを作成することを目的としており,その事例対象校としては北海道,愛知県,三重県等の公立高等学校を選定していたところである。今年度は愛知県の高校への訪問調査を中心として行い,その他の地域の事例に関しては,メディア又は行政機関による公表資料の他,学校等への資料提供依頼により入手しえた資料等を用いた文献調査及び,海外(とりわけ米国)における高校改革と教育行政空間の変容に関する先行研究の文献調査等,理論的な考察を行うことに重点を置いて進めた。 事例分析の成果は、風岡治ほか「人口減少地域における公立高校改革の動向―田口高校と福江高校の取り組み―」『教育ガバナンス研究』第4巻(2021年3月,愛知教育大学教育ガバナンス講座)として公表した。例えば,コミュニティスクールとしては共通しているものの,立地自治体の行政関係者がその委員となっているかどうかなどの類型化を試みた。また,立地自治体からの支援のあり方などの課題を明らかにしている。これとは別に理論的な文献調査も進めた。研究成果を公表するまでには至っていないが,米国の研究論文において地理情報システムなどの活用が進んでいることが明らかになり,本研究計画での応用可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」欄で既述のように,本研究の主たる柱は探索的な定性的事例研究という点にあり,単に文献研究にとどまらず,現地訪問調査による関係者へのインタビューデータに依拠するところが大きい。また,調査対象校には主担当として調査データの収集・分析を担う研究分担者を配置したことに加えて,訪問調査に際しては対象事例へのアプローチの仕方に関して客観性を確保するためにも,少なくとも一回以上は研究メンバー全員が同行することを計画していたところである。ところが,周知のように新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言等が発出されたことや,それに伴って研究代表者をはじめ研究メンバーの所属機関から遠隔地への出張の自粛要請が続いたことから,当初予定していた事例分析のための訪問調査が大きく制約をうけることとなった。とくに,本研究の対象校の中には北海道の離島の高校など,感染拡大地域から訪問調査に向かうことが憚られる地域の学校もあったことなどの理由から,調査データの収集がほとんどできない状況であった。 以上のような経緯により,本研究課題の進捗状況には遅れが出ていることを認めざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
政府または地方自治体から出される新型コロナウィルス感染症拡大防止対策が今後どのような状況になるのかを見極めながら,令和3年度の早い段階で,当初計画したような訪問インタビュー調査が可能となるような状況であれば,対象校側の負担にならない範囲で調査に取りかかり,必要なデータを集めていく予定である。その際,社会全体の危機的状況といった本来想定していなかった特殊な環境条件からの影響をできるだけ除外しうるような分析をすること,またはそうした状況を考慮したうえでの分析を行うことに留意する。 しかし,状況によっては,訪問調査が可能な学校に限定するなど,調査対象校の数を絞っていくことも検討せざるをえないと考えている。その場合には,文献研究などの理論的な研究の比重を高めるなど,研究の重点をシフトせざるをえず,それに備えて資料収集の準備を始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では事例対象校等への訪問調査により各種研究データを収集する計画であったところ,新型コロナウィルス感染症拡大防止策として所属機関等から遠隔地への出張自粛要請がなされたこと等により,当初予定していた旅費等の執行がほとんどできなかったことが主たる理由である。また,それに伴って,調査データの整理・分析に係る研究補助者等への賃金として予定していた人件費・謝金をほとんど使用することができなかった。 今後は,令和3年度中にも所属機関からの出張自粛要請の解除等,状況が好転することがあれば,研究の遅れを取り戻すことができるよう,翌年度分として請求した助成金を用いて,当初計画よりも訪問調査の予定回数を増やして再開していく見込みである。また,文献研究の比重を少し高めることも検討しており,そうした場合の各種文献・図書資料の購入等にも充当していくことを予定している。
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