研究課題/領域番号 |
20K02794
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高瀬 淳 岡山大学, 教育学域, 教授 (00274035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア連邦 / 生活の安全の基礎 / 愛国心教育 / 安全教育 |
研究実績の概要 |
ロシア連邦における教科「生活の安全の基礎(ОБЖ)」について、児童・生徒の「学力」の形成と学校経営上の問題に関連づけながら、その目的・内容・方法に関する調査・考察を行った。特に、を構成する知識・技能が、必然的に国家や地域との関わりや教科横断的な内容を備えることを踏まえ、児童・生徒を取り巻く内外環境の影響を強く受ける状況に着目した研究を進めている。 プーチン大統領は、、2006年に多民族国家であるロシア連邦における「ルースキー世界」の概念を提示し、「ロシア内外の居住する場所にかかわらず、ロシア語とロシア文化を尊重するすべての者の総体」を形成していく方針を明らかにした。さらに、多様な民族の調和に基づく「ロシア全体に共通する市民としての自覚と精神的一体性の強化」を図る方針を明示した大統領令が改めて制定された。ここで示された「ロシアの国民」については、規定の是非を含めた検討がなされているが、そこには、いわゆる国家に対する敬愛や一体性が求められている。 教科「生活の安全の基礎(ОБЖ)」は、ソ連邦時代の軍事教練を引き継ぎ、最終学年においては国防に関する学習内容が含まれている。このことを踏まえ、2022年2月24日のウクライナ侵攻直後に5~11年生を対象として実施された特別授業「歴史の真実」の教員用指導資料を訳出するとともに、映像に記録された複数の授業を比較検討することにより、生活の安全に関する教育(安全教育)に対する国家関与の在り方・問題点を明らかにした。そこでは、公的な性質を有する学校で行われる安全教育について、safetyとsecurityの捉え方に留意し、児童・生徒の個人の価値に立脚した学校経営の本質的な検討が不可欠であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、連邦国家教育スタンダードから教科「生活の安全の基礎(ОБЖ)」の目的・内容・方法に関する実態を明らかにするため、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ハバロフスク及びウラジオストクを訪問し、学校(教職員)や教育行政機関での聞き取りを行うことを計画していた。しかし、世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大が続いたうえに、ロシア連邦によるウクライナ侵攻に伴う措置により現地調査ができなくなり、法制面での基本的な枠組みの把握に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大とウクライナ侵攻に伴う措置により現地調査が不可能な状態となっている。このことを踏まえ、当面、先行研究や政策文書等を通じた法制面の研究を継続しつつ、ロシア連邦の学校教育全体における位置づけを明らかにすることを優先課題とする。ただし、本研究においては、教科「生活の安全の基礎(ОБЖ)」の教育・指導について、初等・中等教育学校、教育行政機関並びに教員養成機関等による実態から考察することが不可欠であり、現地調査が可能となり次第、訪問できるように関係諸機関への依頼を維持する。なお、担当者レベルでは、モスクワ並びにハバロフスクで訪問する学校・教員養成機関が内定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界規模での新型コロナウイルス感染症拡大が継続していることに加え、ウクライナ侵攻に伴う国際的な措置により、予定していた現地調査(モスクワ、サンクトペテルブルグ、ハバロフスク及びウラジオストク)が2年続けて不可能となり、旅費等を執行しないという状況が生じた。本研究は、法制と実態を対比しながら考察するものであり、教科「生活の安全の基礎」に関する指導や教員の資質向上(養成・研修)に関する実態調査が必要である。 そのため、当初に予定してた旅費等を含めて、次年度以降の現地調査の地域・機関を設定し直し、研究の推進を図る。
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