研究課題/領域番号 |
20K02824
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
福本 謹一 兵庫教育大学, その他部局等, 特命教授 (80165315)
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研究分担者 |
福田 隆眞 山口大学, その他部局等, 名誉教授 (00142761)
村上 裕介 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10229974)
佐藤 真帆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (30710298)
淺海 真弓 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (50533428)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 美術教育 / ヴィジュアル・リテラシー / STEAM教育 / 伝統文化教育 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
21年度の研究について、ヴィジュアル・リテラシー理論に関しては、福本・佐藤を中心としてヴィジュアル・リテラシー・ヨーロッパ共通参照枠CEFR-VL (Common European Framework of Reference for Visual Literacy, Wagner & Schonau 2016及びその改訂版についてその提案者であり海外研究協力者のシェーナウ氏の協力を得て、批判的考察を進めており、22年度にまとめる予定である。また海外の状況について、福田は中国のSTEAM教育に関連して20年度の報告に加え、STEAM教育を創造性開発の一部と位置付け、創造的思考の形成や多次元の思考モードの提供といった視点で考察したものを報告した。 STEAM教育関連では、STEAM教育に関する理論的背景、動向について文献研究による分析・考察を進め、その成果の一部を海外研究協力者と共有すると同時に「兵庫教育大学におけるSTEAM教育プログラムに関する予備的考察」に反映させた。 STEAM教育の教材開発に関連しては、村上・淺海を中心に主に伝統文化教育の視点で実践的な取り組みを行い、文理融合の観点から教材開発のモデル化に向けた開発視点を抽出する具体的なワークショップ等を通じて調査研究を行っている。具体的には、篠山チルドレンズミュージアムや兵庫陶芸美術館において、「やきものを変身させて音具を作ろう」「やきものをつなげて宝ものを作ろう!」などのワークショップを行い、デジタル的な処理を含めた要素は少ないものの芸術文化におけるブリコラージュ的な内容を教科等横断的な文理融合学習として展開してその有効性を検討している。また佐藤は、伝統文化教育に関連して教師視点に立つ伝統文化の基礎的な考え方、国際的な文化交流の課題等について報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヴィジュアル・リテラシーに関する文献研究に関しては、主に福本、佐藤により2019年に発行されたInSEAジャーナルのヴィジュアル・リテラシー特集号(InSEA Journal Vol.15 Number 1)を中心として批判的考察を行うと同時に海外研究協力者ともいくつかの論点について議論を行った。ENViL(ヴィジュアル・リテラシー・ヨーロッパ連携ネットワーク)がEUによる補助金制度であるコメニウス計画(エラスムス計画)の共同カリキュラム開発の枠組みを活用して提案したCEFR-VL(ヴィジュアル・リテラシー・ヨーロッパ共通参照枠)=The Common European Framework of Reference for Visual Literacyは、EU内の視覚学習領域の主要な資質・能力(コンピテンシー)の明確化などを目指したものであったが、このCEFR-VLに関しては、リテラシーの用語上の課題が多方面から示唆されたことでヴィジュアル・コンピテンシー(CEFR-VC)に変更されたため、この経緯や変更点などを含めてENViL主宰者と各国のコンピテンシー枠との関連や本来のヴィジュアル・リテラシー論との接続性について疑義が生じており再検討している。 STEAM教育に関連しては、STEAM教育の発展過程、「A」の捉え方、STEAM教育に関する文科省、経産省の示した方向性、実践事例等を確認し予備的な考察をまとめ、その考察を基に兵庫教育大学のSTEAM教育プロジェクトにも寄与したが、実践の有り様について方向性が異なるため、STEAM教育の教材モデル化に関しては、実践的な調査研究のために主に村上、淺海がワークショップの実施を基に教材開発視点の抽出を意図して研究を継続しているが、視点の明確化が遅れたことや佐藤による国際的な課題についても再検討する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、代表者、分担者相互の連携をより図るために対面型の交流も踏まえて研究を継続・活性化し、研究調査の具体化を検討する予定である。 コロナ禍のためにこれまで海外との連携が難しく、国内でのzoom会議にも制約が多いためどうしても議論を深めることに限界を感じていた。 ヴィジュアル・リテラシーに関しては、ヴィジュアル・リテラシー研究そのものとCEFR-CLとを区別し、コンピテンシーに依拠した美術教育の在り方について我が国の学習指導要領に示された資質・能力の3本柱との関係をサブ・コンピテンシーとも関連付けて考察する必要がある。 伝統文化を柱とするSTEAM教育教材開発については、STEAM教育の特徴としてまとめたPBLによる創造的な問題解決学習、教科等横断的方法(文理融合)、社会的現実に対応した課題設定、拡散的解決方法、デジタル技術・理数系知識の主体的活用などを前提としての教材開発視点の検討、モデル化に向けた実践の見直し等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、当初の研究計画に遅延が生じたため、国内研究旅費等の支出に影響が出ていることなどから次年度使用額が生じたため。
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