研究課題/領域番号 |
20K02905
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
三石 初雄 東京学芸大学, 次世代教育研究センター, 名誉教授 (10157547)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンピテンシー / 教師の力量形成 / 価値選択的課題 / 授業研究 / 校内研究 / イリオモテヤマネコ / 西表島 / 義務教育学校 |
研究実績の概要 |
本研究の基本枠組みに即して、次の4小課題に即して研究を進めた。 1つは、今日の学校教育におけるコンピテンシー/コンピテンス概念に関わる理論的実践的研究動向を視野に入れ、「内発的動機づけ」に関わる研究を進めた。具体的には、①ピアジェ以降の内発的動機づけに関する系譜を追いながら、②R.W.ホワイトのコンピテンス概念の検討と教育社会学研究でのコンプタンス概念の検討状況、③我が国における「内発的動機づけ」に関する系譜と今日的研究動向を整理し、④これからの授業研究とそれを推進するための教師の力量(とりわけ教材開発力)に関しての考察を進めた。 2つには、価値選択的課題に取り組んでいる先駆的実践研究の到達点と課題の整理に関わり、教師の力量形成に関してのアクションリサーチ的な研究(校内研究システムの研究)を整理し、小学校教師と共同的著作物を作成し、公立校での実施可能性を検証する基礎を作った。具体的には、ある公立小学校の校内研究に3年間恒常的に参画することによって、教師の力量形成と校内研究の活性化に関しての実践研究の成果をまとめた。 3つには、本研究で中心的に取り組むイリオモテヤマネコ保全教育を対象とした価値選択的課題に焦点を当て、西表島現地の小中学校での授業づくりと教材研究のための基礎資料の作成作業を行った。具体的には、授業づくりと教材研究の基礎資料(1次素案)を作成し、それに沿った具体的授業資料の選定と教材化を進め資料集(冊子)の概要を明らかにした。 4つには、韓国ヤマネコの生態と保全教育活動の調査並びに研究協力者との意見交換を基に資料収集を進めた。その結果、韓国国内においても野生生物(ヤマネコ)の保全とその教育的意味の普及活動がなされていることが見えてきた。今後、韓国の科学館や動物園での野生動物の保全プロジェクトを収集・検討し、実地調査を行う手がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つ目の小課題については、コンピテンシー/コンピテンス概念に関しては、「内発的動機づけ」に関わる理論的実践的研究を進め、3つの論考にまとめた。具体的には、①波多野誼余夫、稲垣加世子、鹿毛雅治らの研究成果を整理し、コンピテンシーの2つの流れを明らかにし、②我が国における「内発的動機づけ」に関する系譜と今日的研究動向を整理し、③教師の力量形成に関して考察を進めることができた。 2つ目の小課題については、価値選択的課題にも積極的に取り組んでいる校内研究・授業研究に参画してきた内容を、小学校教師と共に刊行本にまとめた。 3つ目の小課題では、①イリオモテヤマネコに関わる調査、研究、記録や普及資料を収集し、西表島の哺乳類・生態学研究者(元琉球大学教授・現いのちのたび博物館長・伊澤雅子氏)から聞き取りと関連資料調査を行った。また、②西表島現地の小中学校での授業づくりと教材研究のための基礎資料作成作業を行い、基礎資料(1次素案)の作成と具体的授業資料の選定と教材化を進め、資料集(冊子)の概要を明らかにし、一部資料集を作成した。 4つ目の小課題では、①韓国の研究協力者と連絡を取り、韓国でのヤマネコ保全教育活動のWeb調査と若干の資料収集を行い、②韓国国内における科学館や動物園での野生動物の保全プロジェクトを収集可能性の目途が立ってきた。 しかし、新型コロナ下により、渡航が不可能であり、沖縄・西表島並びに韓国及び中国への訪問調査は実施できていない。このように、計画が次年度にずれ込んでしまっている点で、全てが予定どおりに進んではいない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画にあるように、四つの課題に即して進めていく。 1つは、今日のコンピテンシー/コンピテンス概念を初発の提起から原理的検討として、①J.S.ブルーナー『コンピテンスの発達』『乳幼児の知性』やR.W.ホワイト『自我のエネルギー』等の再評価を更に行う。②これまでの波多野誼余夫、稲垣加世子、三宅なほみ、白水始、鹿毛雅治らの研究成果の検討との連続性に関しての検討を進める。 2つには、価値選択的課題に取り組んでいる国内の先駆的理論研究と実践的研究の到達点と課題を整理する。特に子安潤と大森享らによる理論的研究を手がかりに、北海道のシマフクロウ保全(標茶町)やクマ等野生動物との共生可能性の探究(羅臼町)、沖縄県西表島のイリオモテヤマネコの保全活動について現地調査と実践記録から分析する。 3つには、韓国ヤマネコの生態と保全教育活動の調査並びに研究協力者との意見交換のために韓国(ソウル)・中国(長春)に訪問調査を行う。なお新型コロナの沈静化の進展具合によって実地調査は不可能かもしれないが、Web並びにメールでの韓国の研究協力員との意見交換により情報収集と意見交換を行う。実地調査の可否は8-9月の時点で判断する。 4つには、沖縄・西表島におけるイリオモテヤマネコ保全教育を対象とした価値選択的課題に焦点を当てた義務教育段階における授業づくりあるいは教材研究のための基礎資料集を作成する。そこでは認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金による西表島の全小・中学校への出前授業等の取り組みを基に、上記の三つの原理的考察と実践研究、海外の実践例を参考に、基礎資料を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.出張を予定していた2案件が、新型コロナ蔓延のために、実施できなかったことが、一番大きな原因である。具体的には、①韓国の小学校並びに野生生物・動物園への訪問を実施できなかったこと、②日本での日韓合同研究協議会を開催できなかったこと、③沖縄・石垣市の図書館並びに新聞社への資料収集と聞き取りが実施できなかった。 2.上記理由により、資料集に掲載しようとしていた資料を、翌年の4-5月期に入手できる可能で西表島があるので、次年度経費での執行とした。
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