本研究では4小課題を設け、コロナ禍の影響により1年延長して研究を進めた。 1つは、今日のコンピテンシー/コンピテンス概念を初発の提起から原理的検討を進め、資質・能力概念の本源的内容を明らかにすることである。この点に関しては、①J.S.ブルーナーやR.W.ホワイトらの一連の研究と著作の再評価を試み、波多野誼余夫、稲垣加世子、三宅なほみ、白水始らの認知心理学・学習科学的研究の諸成果と関わらせて検討した。 2つには、価値選択的課題に取り組んでいる先駆的実践研究の到達点と課題の整理である。子安潤(中部大学)と大森享(元北海道教育大学)による理論的研究を手がかりに、沖縄県西表島のイリオモテヤマネコの保全活動の取り組み等々についての現地調査と実践記録により分析を行い、公立学校で授業教材の視点を整理し、資料収集/整理を行った。 また、3つには、本研究で中心的に取り組むイリオモテヤマネコ保全教育を対象とした価値選択的課題に焦点を当てた義務教育段階における実践的研究の可能性と課題を明らかにし、教育課程編成の原理的考察を行った。具体的には、認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金が取り組んできた、西表島の全小・中学校への出前授業と先駆的学校(小中各1項)での取り組みを基に、イリオモテヤマネコの野生生物保全教育に即して「価値選択的課題」プログラムを試作・試行した。 4つには、韓国ならびに中国ヤマネコの生態と保全教育活動の調査並びに研究協力者との意見交換のために韓国と中国に訪問調査あるいは研究協力者の訪日による公開研究会を行い、韓国からは貴重なヤマネコの実在状況に関する映像資料とともに、観察記録/資料等を入手した。また、中国(黒竜江省)では、アムールヤマネコの保護等が十分行われていない事情を知ることができた。
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