研究課題/領域番号 |
20K03043
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大塚 玲 静岡大学, 教育学部, 教授 (00233172)
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研究分担者 |
山元 薫 静岡大学, 教育学部, 准教授 (00755944)
ヤマモト・ルシア エミコ 静岡大学, 教育学部, 教授 (20451495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 外国人児童生徒 / 特別支援学級 / 日本語指導 / 特別の教育的ニーズ / 特別支援教育 |
研究実績の概要 |
研究①外国につながりのある児童生徒への教育支援体制-静岡市の取り組み-:年々増加傾向にある外国につながりのある児童生徒の問題について、散在地域である静岡市の教育支援体制の現状と課題を明らかにするために静岡市教育委員会の担当指導主事を対象にインタビュー調査を行った。その結果、静岡市では就学前の支援としてのプレスクール、就学後の日本語指導(教室、訪問)及び適応相談、進学に向けての高校進学ガイダンスなどの事業が徐々に規模を拡大しながら実施されていることが認められた。一方で、日本語指導教員・日本語指導員の研修体制、外国につながりのある児童生徒を担任する教員の指導力の向上のための方策、さらには多言語化への対応が今後の課題と考えられた。 研究②外国人児童の授業参加において学級担任が感じる困難について:公立A小学校に在籍する日本語指導を必要とする外国人児童3名に対する定期的な参与観察及び在籍学級の担任教師3名へのインタビューを実施し、それぞれの外国人児童の授業参加の実態を把握し、学級担任による児童への支援及び配慮、さらには担任が感じている困難を明らかにした。その結果、学級担任が感じている困難の背景には、外国人児童の日本語能力の低さによる学年相当の学習の難しさ、外国人児童がICT機器を活用することの難しさ、通常学級における特別な支援を必要とする児童の多さと活用できる人的資源の少なさ、外国人児童の表れが日本語能力の問題なのか、発達の問題なのかを判断する難しさの4点が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、自治体における教育支援体制の調査(訪問調査)を計画していた。具体的には、外国人児童生徒が小・中学校に多く在籍する5都府県(愛知県、神奈川県、東京都、静岡県、大阪府を予定)から外国人児童生徒が多い市区町村を1つ選定し、外国人児童生徒に対する教育支援体制や障害のある外国人児童生徒の就学支援の仕組みを把握する目的で教育委員会を対象に訪問調査を実施する予定であった。しかし、コロナウイルス感染の状況により県外での調査が予定通り進まなかった。また、特別支援学級に在籍する外国籍の児童生徒数を調査するため、県内のいくつかの市町の教育委員会を訪問したが、具体的な数値を教育委員会が把握していない、あるいは公表できないなどの理由で、調査方法の再検討を余儀なくされた。また、特別支援学級に在籍する外国籍児童生徒に対する担任の支援や困難については、実施に至らなかったが、その予備的な研究として、通常の学級に在籍する外国籍の児童の学習状況の実態と、それに対する担任の支援や配慮、担任が感じている困難についての事例研究を実施した。来年度は、1公立小学校を対象に特別支援学級に在籍する外国籍児童とその担任に対する事例研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、以下の研究活動を行う予定である。 研究①:自治体における教育支援体制の調査(訪問調査): 外国人児童生徒が小・中学校に多く在籍する5都府県(愛知県、神奈川県、東京都、静岡県、大阪府、群馬県を予定)から外国人児童生徒が多い市区町村をいくつか選定し、外国人児童生徒に対する教育支援体制や障害のある外国人児童生徒の就学支援の仕組みを把握する目的で教育委員会を対象にアンケート調査及び訪問調査を実施する。また、日本語指導教室設置校、教育センター、拠点校などの当該自治体の日本語指導に関わる教育機関等についても聞き取り調査を行い、外国人児童に対する自治体の教育的支援の仕組みの在り方について検討する。 研究②:外国人児童が在籍する特別支援学級における参与観察及び学級担任への聞き取り調査: 静岡県内の公立小学校の特別支援学級において事例研究を実施する。特別支援学級担任に対しては、在籍する外国人児童生徒の実態(在籍状況や障害の程度)や教育の取り組みの成果や課題について聞き取りを行う。また、当該特別支援学級において外国人児童の授業への取り組みの様子などを定期的に参与観察し、担任に対する聞き取り調査の内容と照合しながら考察を行う。さらに管理職に対して通常学級に在籍する外国人児童生徒の在籍状況や日本語指導を必要とする児童生徒への支援体制、特別支援学級の活用と連携について質問する。 研究③:外国人児童生徒の保護者に対する日本の教育上の支援についての聞き取り調査: 本調査については、すでに令和3年度より取り組んでいるものである。令和4年度に実施した在日ブラジル人保護者へのアンケート調査の追跡研究を引き続き行う。公立学校おいて「特別の教育課程」による日本語の指導を受ける児童生徒の保護者らが重要視する教育内容、学校教育に求める学力の保障及び子どもの進路について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:コロナウイルス感染及び調査内容に対して自治体が回答することが困難な項目があることが判明したため、調査項目を再検討する必要が生じ、県外の自治体での教育支援体制の調査(訪問調査)が実施できなかった。そのため当初予定していた旅費や宿泊費を使用しなかったこととそれにかかわるデータの整理や分析のために用意していた資料整理のための人件費(アルバイト費用)を使用しなかったため。 使用計画:外国人児童生徒が小・中学校に多く在籍する5都府県(愛知県、神奈川県、東京都、静岡県、大阪府、群馬県を予定)への訪問調査のための旅費と宿泊費用に充てる予定である。また、自治体等へのインタビュー調査や特別支援学級における事例研究、保護者に対するインタビュー調査に関するデータ整理と分析のための人件費(アルバイト費用)を予定している。
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