研究課題/領域番号 |
20K03295
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
有倉 巳幸 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (90281550)
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研究分担者 |
神山 貴弥 同志社大学, 心理学部, 教授 (00263658)
稲垣 勉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (30584586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学級内地位認知 / いじめ傍観者 / 多元的無知 / コミュニケーション能力 / 一般的信頼感 / 学級集団 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校現場の喫緊の課題であるいじめ防止のための学術的知見を得るため、いじめを傍観するメカニズムとしての多元的無知(pluralistic ignorance)に着目し、学級内地位認知(自身及び自集団の影響力認知など)及びいじめ傍観者行動(いじめ傍観者意識、他の生徒のいじめ傍観者意識の推定など)の測定を通して、いじめを誘発する傍観者行動が学級集団の階層性によって規定されるかどうかを明らかにする。学級集団の階層性については、マルチレベル分析を用いて、集団レベル(学級集団の階層構造)と個人レベル(学級内地位認知)のそれぞれの効果を抽出する。併せて、学級内地位認知と、コミュニケーション能力や他者への信頼感との関係性を検討することで、学級内で起こるいじめ傍観者行動について、マクロ及びミクロの点から記述し、いじめ防止に繋がる示唆と対策を提言することを目指す。 当該年度は、個人の学級内地位認知と、コミュニケーション能力及び一般的信頼感との関係を検討することを目的とした。学級内地位認知については、有倉(2017)同様、3つの異なる文章を読んで自分に最も当てはまる文章を選ばせることとした。加えて、本研究では3つの文章それぞれ自分に当てはまる程度についても尋ね、学級内地位認知を詳細に検討したいと考えた。また、コミュニケーション能力については、森口(2008)らの知見を踏まえて、主張性、共感性、同調性の3つの側面から検討することとした。これらの構成概念について、先行研究を踏まえて定義をし、測定項目を作成した。 仮説としては、学級内地位認知の上位群は中位群や下位群よりも一般的信頼感やコミュニケーション能力が高いだろうと考えている。また、学級内地位認知と、一般的信頼感やコミュニケーション能力との関係が個人レベルだけでなく学級集団レベルでも説明できるだろうと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在、学級内地位認知の妥当性及び、コミュニケーション能力との関係を検討するために、先行文献の収集及び調査内容の検討を行ってきた。本研究では学級内地位を測定する説明文が適正に測定できているかを吟味する必要がある。また、コミュニケーション能力については、主張性、共感性及び同調性から検討することとし、先行研究を踏まえこれらの概念定義を行い、測定尺度の作成を行った。 当初は、当該年度内に県外に出向き、調査依頼をし実施する予定であったが、移動が制限され、また、調査依頼先もコロナ対応に追われて実施できる状況になかった。研究分担者とはオンラインでの検討をするに留まっている。予定していた調査をなるべく早期に実施できるように進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
少なくとも今年度までは県外での調査依頼は見送り、鹿児島県内及び研究分担者のいる京都府の学校に調査依頼をかけて実施していきたいと考える。7月までには第1調査を実施し、データ入力及び分析を行った上で研究成果をまとめていく。また、可能であれば、今年度調査予定の第2調査を年度末を目処に実施したいと考えている。一部の成果については、オンラインで開催される学会等で発表を予定している。 なお、現在の状況がしばらく続くことを考えると、当初予定していた研究を完全に実施するためには、研究期間をさらに延長していく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究データ収集のための打合せや、データ分析、研究発表等で県外に移動することを予定していたが、これらの旅費が執行できなかった。これに伴い、調査依頼をかける学校等もコロナ感染拡大への対応に追われ、調査実施そのものが叶わなかったため、データ入力等に係る人件費の執行ができなかった。次年度は、調査を実施し、主に印刷費及びデータ入力の人件費を使用する予定である。また、県外移動が可能になれば、調査依頼や成果発表等で旅費を執行する予定にしている。
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