本研究より、援助を必要とする人物が引き起こす否定的感情を制御する力が向社会的行動の生起において重要であること、認知能力が高い者ほど集団間共感バイアス(外集団より内集団に共感し援助を行う)を引き起こすこと、外集団成員回避目標が活性化した場合は、認知能力が高い者ほど外集団への援助政策を支持しないことが示された。さらに、外集団脅威状況において、認知能力が高く認知的共感を行う者ほど外集団への否定的感情が生じにくいことが示された。社会の分断を克服するためには、認知能力の個人差と文脈要因を踏まえて、共感の促進的・抑制的効果を明らかにする必要があることが明らかとなった。
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