研究課題
複雑化するストレス社会の中で、医療や心理臨床など様々な分野でストレスと身体の関係解明の重要性が高まっている。本研究では、ストレス関連疾患における生理的ストレス反応、心理・臨床情報の多変量データから、臨床的に意味のあるストレス反応パターンの抽出と、ストレス反応モデルの構築を目的とした。今年度の実績の概要は以下の通りである。①社会機能やQOLの低下が特徴的なストレス関連疾患において、心拍変動のストレス反応の特徴的パターンが抽出された。健常人では安静時に迷走神経系心拍変動が高く、ストレス負荷により大きく低下するが、その後速やかに回復する。これに対して、QOLが低下したストレス関連疾患では、安静時から迷走神経系心拍変動が低下しており、ストレス反応はほとんどみられず、その後の回復もない「フラットで低いパターン」が認められた。一方、交感神経機能を含む心拍変動については、ストレス反応が健常人より高く、交感神経反応がこのパターンに寄与する可能性も示された。この結果について Appl Psychophysiol Biofeedback誌に投稿・掲載され、その概要をウェブ上に公開した。②生理指標のストレス前~後にかけての時系列変化について、機械学習の時系列処理に適した枠組みであるリザバーコンピューティングによる検討を行った。多変量の生理指標(心拍、スキンコンダクタンス、皮膚温)における15分のストレス前後の変化が、気分やQOLなどの心理状態を予測できるか検討した結果、気分障害の予測における有用性が示された。機械学習の性質上、どのような時系列変化の特徴が気分障害に関与するかは明確でない。今後、説明可能な従来型解析と組み合わせてその特徴を特定する必要がある。リザバーコンピューティングは、時系列パターン認識への応用が期待されており、ストレス反応パターン解析における大きな可能性が確認できた。
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Applied Psychophysiology and Biofeedback
巻: 49 ページ: 145~155
10.1007/s10484-023-09608-z
BioPsychoSocial Medicine
巻: 17 ページ: 1-8
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https://psychosom.net/research/stress-response-pattern/