研究課題
本研究対象である擬凹旗領域の研究手法には,サイクル連結性を使った手法とコンパクト部分多様体の法線束を使った手法がある.これまでは主に前者のアプローチから研究を行っていたが,さらに前者と後者の関連性に着目して研究を進めた.これまでのサイクル連結性の研究により,ワイル群の組み合わせ論的な情報から1連結性が得られることが分かっている.ここで1連結性は「最も強い擬凹性」に対応する.これは法線束の豊富性の観点からも特徴づけられると思われる.Hongらによる法線束の研究結果を精査し,そこでワイル群がどう働くのかを調べた.波及効果として考えていたコンピュータグラフィックス(CG)でもいくつかの成果が得られた.ピクセルごとの数値計算によってCGを生成する手続き的なリアルタイムCGプログラミングでは,しばしば数学的な関数を使ってテクスチャリングやモデリングが行われる.ここでは関数の滑らかさや対称性など,数学的な特性がCGの質に影響を与え,数学的な変換によってCGの操作を行う.このようなCGにおける数学に関してまとめた単著を出版し,関連してCGの国内学会でも講演を行った.さらに数理的生成手法によるデジタルファブリケーションについて,その実践例を国際学会に投稿し2件受理された.準周期タイリングをもとに,形状生成パラメータを最適化してモデリングした建築デザインについて,数学とアートの国際学会で発表した,また手続き的なノイズ関数を使って作成した西陣織について,デジタルファブリケーションの国際学会でデモ発表した.この西陣織作品は京都市京セラ美術館で一般公開された.
2: おおむね順調に進展している
旗領域については2022年度内に十分深い結果が得られなかったが,波及効果として考えていたCG分野では,国際学会で成果を発表することができ,想定以上の成果が得られた.よって総合的に見て順調であると判断した.
旗領域については,法線束の豊富性の観点から1連結性を捉えることを目指す.またコンピュータサイエンスの国際学会に投稿したことにより,数学以外の分野で論文を書く上での課題や改善点も明らかになった.2022年度にデモ発表した数学と織り物に関する成果を論文としてまとめて,国際学会での採択を目指す.
2020年度,2021年度は,COVID-19のため多くの対面イベントが中止となり,出張費で大幅な未使用額が生じた.2022年度は対面イベントが行われるようになったが,出張には諸々の制約があったため,必要最小限の出張に留まるものだった.2023年度にはそういった制約も大幅に軽減されるとみられるため,出張に使用する予定である.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Proceedings of Bridges 2022: Mathematics, Art, Music, Architecture, Culture
巻: - ページ: 343-346
Proceedings of the 7th Annual ACM Symposium on Computational Fabrication (SCF '22) Demo Abstracts
巻: - ページ: Article 32 p.1
10.1145/3559400.3565580