研究課題
基盤研究(C)
本研究ではDrinfeld保型形式の傾斜の数論について研究を行った.Drinfeld保型形式は楕円保型形式の関数体類似であるが,その数論についてはまだ分かっていないことが多い.最大の成果はレベルΓ1(t^n)のDrinfeld尖点形式の空間における傾斜0部分にすべてのHecke作用素が自明に作用することを示したもので,これは1980年代に提出されたGekelerの問いに対する否定的回答を与える.
数論
本研究で得られた傾斜0部分へのHecke作用の自明性は楕円保型形式では知られていない,Drinfeld保型形式特有の現象である.また,楕円保型形式で成立している弱重複度1と呼ばれる性質が重さを固定してもDrinfeld保型形式では成立しない,ということもここから従う.本研究成果はこのように,楕円保型形式にないDrinfeld保型形式の特異性を明らかにしたという点で意義深いものである.