研究課題/領域番号 |
20K03583
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
横山 知郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30613179)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 力学系 / トポロジー / 葉層構造 / 位相不変量 |
研究実績の概要 |
これまで力学系理論において,どのような流れがジェネリックかという問題や構造安定であるかという問題は活発に研究されてきた.特に,低次元の力学系に対して位相不変量を構成することにより,その分類が行われている.他方,表現が良くないと,調べたい対象の位相不変量の計算が困難となる場合がある.そこで,具体的な流体現象の解析をするために,流れの位相不変量の表現で,計算に適したものを構成する必要がある.そのため,具体的な流体現象なども効率的に解析できるような計算機上で実装可能な流れの位相不変量の表現を構成することは,理論的にも応用的にも解決すべき課題である.特に,本研究課題は,より良い位相不変量を構成し,計算機上の実装に適した表現を構成することを目的としている. 学術的な問いとして,(1) 流れの位相不変量の精密化,(2) より広いクラスの力学系に適用できる位相不変量の構成,(3) 有限的に表現されていない位相不変量の有限的な表現への縮約,(4) 流れの位相不変量の計算に適した表現の構成,(5) 流れの位相不変量を用いた遷移グラフの構成,(6) 遷移グラフや分岐図を用いた力学系のトポロジカルな解析,を中心に扱う.本年度は,初年度に得た高次元の流れの位相不変量の構成の基礎となる力学系と半順序構造の関係を発展させて,Morseグラフ,Morse-Smale流の付随するCW複体構造,曲面上のジェネリックなHamilton流のReeb graphの一般化となるような新しい高次元の位相不変量の構成し,その内容について論文を出版した.さらに,unimodal map (単峰写像)の周期軌道の分岐の結果を,曲面上の力学系の不変集合を解析する手法を用いて,"C^1級のunimodal map"の場合について拡張し,その内容について論文を出版した.また,流れに関係する研究成果を,数学会の特別講演で報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように,Morseグラフ,Morse-Smale流の付随するCW複体構造,曲面上のジェネリックなHamilton流のReeb graphの一般化となるような新しい高次元の流れの位相不変量の構成し,その内容について論文を出版した.さらに,トポロジカルな手法を駆使して,unimodal mapの周期軌道の分岐の結果を"C^1級のunimodal map"の場合について拡張し,その内容について論文を出版した.また,これらを含む流れに関連する研究成果を数学会の特別講演で報告することにより,多くの研究者に研究成果を周知することができた. 初年度から検討しているコンパクト曲面上の流れのジェネリックなクラスである勾配流とその一般化のMorse-Smale流の研究については,Morse-Smale流のトポロジカルな特徴付けができたので,その遷移グラフを構成方法を検討している.特に,コンパクト曲面上のMorse-Smale流は摂動しても不変であるという構造安定性を有することが知られているため, Morse-Smale流の時間発展などを記述するためにはMorse-Smale流でない流れを経由してMorse-Smale流の変化は記述されるので,得られたMorse-Smale流のトポロジカルな特徴付けを用いて,勾配流やMorse-Smale流の遷移の理論を構築しようとしている. 他方,構築した新しい流れの位相不変量の類似として,力学系的な視点による位相空間の新たな位相不変量の構成ができる可能性があり,それについて検討している.さらに,流れのみならず,半群作用や葉層構造などの空間分割に対しても,同様の位相不変量を構成しようとしている.それを実現するための基礎として,流れや葉層構造のみならず,半群作用や空間分割を統合するような構造を見出すことは大きな課題である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗を踏まえて,以下の研究を進めていく.(1) 力学系的な視点による位相空間の新たな位相不変量の構成する理論的基盤を整備する,(2) コンパクトな穴あき球面上のHamilton流の位相不変量の生成する遷移グラフの構成を,非有界なHamilton流に拡張するとともにより高次元の構造に拡張する,(3) コンパクト曲面の勾配流の遷移のトポロジカルな特徴づける,(4) 曲面上のさまざまな流れの性質のトポロジカルな特徴を行う,(5) 曲面上のHamilton流に対する結果をより一般の流れのに対する結果に拡張するための基礎として,Hamilton流のトポロジカルな特徴付けを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の流行により,国内外の出張が予定通り執行できずそれにともない旅費や人件費・謝金などの関連する経費の執行が次年度に生じ.また出張がほとんどできないことに伴い,オンラインを活用するための環境を補強した.
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