研究実績の概要 |
向き付け可能な閉 3 次元多様体上の非特異フローと横断的に交わる分岐スパインをフロースパインとよぶ. ここで, フロースパインの補空間上のフローはコンスタントであるとする. 本課題では, 石井一平氏, 石川昌治氏, 直江央寛氏と共同で, 正フロースパインを定義し, 接触構造に付随する Reeb フローのフロースパインに着目することで得られる, 接触構造と正フロースパインの対応に関する研究を進めている. 特に, 3 次元多様体上の正フロースパインの (イソロピー類の) 集合から (正) 接触構造の (イソロピー類の) 集合への単射を明示的に構成し, これにより, スパインの頂点数を介して接触構造の複雑度を定義することが可能になった. 昨年度までの研究 (本課題の準備段階での研究) に引き続き, 本年度は, 頂点数の少ない正フロースパインの分類,複雑度の低い接触多様体の分類を進めた. また, フロースパインに対して定義される変形と, carry されるフローの可動範囲について考察を行った. 関連する話題として, 絡み目の安定写像の特異点に関する研究 (古谷凌雅氏と共同), 3 次元多様体内の曲面の homotopy motion 群に関する研究 (作間誠氏と共同) を行い, 論文を執筆した. また, ブレイド群と結び目に関する研究 (Sangbum Cho 氏, Arim Seo 氏と共同), 閉 4 次元多様体のシャドウ複雑度に関する研究 (Bruno Martelli 氏, 直江央寛氏と共同), 非輪状な 4 次元多様体のシャドウ複雑度に関する研究 (直江央寛氏と共同), 絡み目の橋分解の Goeritz 群に関する研究 (井口大幹氏, 廣瀬進氏, 金英子氏と共同) に関する論文が査読付き国際誌から受理され, 掲載済み, あるいは掲載待ちの状況にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度から開始された本研究課題, 特に接触構造とフロースパインの対応について, 準備段階から既に十分な成果を上げることに成功した. 特に, 理論の土台部分を構築することに成功し, そのブラッシュアップと例の構成の段階へとステップを進めることができた意義は大きい. 得られた成果については既に論文を執筆しているが, 技術的に複雑な議論が多く, 長大な論文となっているため, 論文の再構成を含め, 論文の内容へのアクセシビリティを高めるよう手を加える必要があると考えている. 一方, シャドウを用いた 3・4 次元多様体の組み合わせ構造, とりわけ複雑度について成果を上げ, 発表することができた. 関連する話題として, 絡み目の Goeritz 群を定義し, 幾何群論,力学系的な観点から興味深い性質を見出すことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り, 接触構造とフロースパインに関する論文を再編し, 内容へのアクセシビリティを高めることを一つの課題としたい.フロースパインに carry されるフローの力学系は, 2 次元円盤上のグラフを不連続点もつ離散力学系を用いて記述される. 接触構造の Reeb フローの力学系, 特に周期軌道の存在性については Weinstein 予想の肯定的解決により保証されており, さらに精密な研究が行われている段階にあるが, フロースパインを介した組み合わせ的手法による力学系の考察を今後の課題としたい. 特に, 正フロースパインの中で頂点数が最小である abalone について, carry される全てのフローが周期軌道を持つか検証を進めていきたい. また, 4 次元球面内の 2 次元結び目について, シャドウを用いた記述, 複雑度の研究を進めていくことを予定している.
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