研究課題/領域番号 |
20K03677
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 直樹 静岡大学, 理学部, 教授 (00207119)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 遅れを考慮した非自励な方程式 / 準線形方程式 / カラテオドリー条件 / 初期値問題に関する適切性定理 / 初期値問題に関する近似定理 / 変異解析 / 距離空間における微分方程式 / 半線形発展方程式 |
研究実績の概要 |
[1] 時間に依存する単調作用素、劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張について:本課題への異なる視点からの接近法として、遅れを考慮した非自励な方程式を考察対象に選び、発展方程式の枠組みの拡張を試みた。拡張指針として、この種の方程式に関する従来の様々な研究を統一的に扱う理論の構築を目指すこととし、スティルチェス積分により記述される積分方程式の最大解を利用した、非自励な非線形関数微分方程式の解の増大度条件を提案し、応用上の汎用性を高めた。連続な有界変動関数を利用した連続率による、方程式を支配する作用素の時間に関する連続性条件の下で、非自励な非線形関数微分方程式の可解性を確立した(Math. Machr. 掲載決定)。もう1つの拡張の方向性として、時間とともに変化する定義域をもつ準線形方程式の可解性の研究を実施した。定義域を一定にする変換の導入を視野に入れ、定義域は一定であるが、方程式を支配する作用素族の時間に関する滑らかさの条件を極力弱める方向に目をむけ、準線形作用素族に支配される微分方程式系の可解性に関する結果を目指した。カラテオドリー条件を満たす準線形作用素に支配される発展方程式の初期値問題に関する適切性定理および近似定理を確立し、原稿を投稿中である。 [2] 変異解析が秘める可能性の追究-距離空間における微分方程式の適切性理論の深化を目指して-について:Aubin により導入された、距離空間において微分を表現するための数学的道具について、その時間に関するリプシッツ連続性条件を仮定しない設定の下、変異解析を展開した。さらに、その成果をバナッハ空間における半線形発展方程式及び距離空間における遅れを伴う微分方程式へ応用した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究実施として、「時間に依存する単調作用素、劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張」を挙げていた。視点は異なるが、発展方程式の枠組みの拡張として、スティルチェス積分により記述される積分方程式の最大解を利用した応用上汎用性の高い条件下で、非自励な非線形関数微分方程式の可解性を確立し、その結果の学術誌への掲載が決定している。また、カラテオドリー条件を満たす準線形作用素に支配される発展方程式の初期値問題に関する適切性定理および近似定理を確立し、原稿を投稿中である。さらに、令和3年度に着手する予定であった「変異解析が秘める可能性の追究-距離空間における微分方程式の適切性理論の深化を目指して-」について、距離空間における微分を表現するtransition に課す条件について、応用における関数空間の選択に制約をかける時間に関するリプシッツ連続性条件を除去することに成功し、その結果は学術誌へ出版されている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度に予定していた「時間に依存する単調作用素、劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張」について、遅れを考慮した非自励な方程式の適切性の確立、及び、カラテオドリー条件を満たす準線形作用素に支配される発展方程式の初期値問題に関する適切性定理および近似定理を行ったが、微分方程式のイメージと結びつきにくい連続性の条件に着目しながら、主目的である「非自励な方程式系の初期値問題の適切性」へ挑みたい。さらに、「変異解析が秘める可能性の追究-距離空間における微分方程式の適切性理論の深化を目指して-」について、Hadamard 空間などの具体的な距離空間における微分方程式への応用を視野に入れた研究活動にしていきたい。また、令和4年度以降の研究実施としている「距離空間における勾配流に対する適切性定理の拡張-自励系から非自励系へ-」の準備として、変数指数の空間に応用可能な2重非線形方程式の初期値問題の可解性に取り組みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定していた研究集会への現地参加、対面での研究打ち合わせ、外国人招聘が、新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかったため。 (使用計画) 新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しながら、研究が円滑に実施できるリモート環境を整備する予定である。
|