時間の経過とともに変化するシステムの状態は、しばしば微分方程式を用いてモデル化される。通常の系のモデルにおいては、将来の状態は現時点の状態のみに依存する、いわゆるマルコフ的なシステムを考えるが多い。一方で、様々な分野における多くの問題では、将来の状態が現在のみならず過去の状態履歴による経路依存的なシステムを考える場合があり、そのような経路依存システムに対して最適制御を展開することは、理論と応用の両面において重要である。本研究課題では、経路依存性を持つ微分方程式で支配されるシステムにおける最適制御や微分ゲームに対して、動的計画的手法の一般論を構築することを目標とする。本年度は主に、Caputo微分を用いた微分方程式でモデル化されるシステムにおける動的計画法の研究を行った。具体的な研究業績内容は以下の通りである: (1) Caputo微分方程式により支配されるシステムにおける微分ゲームに関連するIsaacs偏微分方程式の粘性解の比較定理に関して、その研究成果を国際会議や研究集会で発表を行った。それに関する研究論文の国際学術雑誌へ掲載が受理された。 (2) (1)におけるIsaacs偏微分方程式の粘性解の数値解析の研究を行った。Caputo微分方程式のEuler近似を動機として離散時間近似スキームを提唱し、時間ステップ幅を0に近づけたとき、離散時間近似が粘性解に収束することを示した。この研究成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する準備を進めている。
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