研究課題/領域番号 |
20K03951
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
安武 伸俊 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (10532393)
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研究分担者 |
丸山 敏毅 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354882)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子動力学 / 中性子星 |
研究実績の概要 |
我々の色分子動力学にスピン相互作用を導入して様々なバリオン質量を計算し、実験値を再現することに成功した。 まずここでは計算を簡単にするために、スピン相互作用は固定している。このように、バリオンのようなクォーク少数系に関しては、我々の計算結果は現実的な振る舞いをすることが分かったが、単純に多体系へ拡張すると破綻することが一方で明らかになった。色磁気相互作用を有効二体相互作用へ落とし込む際に、多体効果を十分に反映していないことが主だった原因であると考えている。そもそも、少数系であれば代数的に色磁気相互作用を解析することも可能であるが、数千を超える粒子の色とスピンの合成に関しては、方針がよく分かっていないために比較すべき解がないことも問題を複雑にしている。現在得ている結果は、色磁気相互作用を考慮すると、高密度多体系ではエネルギーが異常に低くなるといったものである。この問題に関して、現在はクォーク多体効果が、高密度において発現するような有効相互作用が存在すると考えている。 そのような多体計算においてしばしば問題となるのは、その計算コストである。しかし、幸いにも本研究費によってGPUアクセレレータを購入することができた。それによって、本研究の計算コードをGPU並列化することに成功した。現在では新たに再開発したこのコードを、日本原子力研究開発機構のスーパーコンピュータ(SGI8600)で実行し、同コンピュータによるCPU並列計算の10倍以上の速さに高速化することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、色磁気相互作用の導入、及びGPUアクセレレータを用いた計算コードの高速化は完了している。残る問題は、多体系における色磁気相互作用の非現実的な振る舞いをどうするかという問題である。すでにバリオン質量に関しては、実験値をほぼ完全に再現しているために、一旦これまでの結果をまとめて論文として出版することも視野に入れている。多体系での振る舞いに関してはいくつか試すべき点があり、順次試行計算を行う予定である(後述の【今後の研究の推進方策】参照)。
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今後の研究の推進方策 |
現状の我々の計算では、色磁気相互作用を導入すると、高密度においてのみ非現実的な引力が現れる。一方で少数系の計算においては、各バリオン質量の実験結果をほぼ完全に再現している。ゆえに単純には、多体系(高密度)においてのみ効くような、非現実的な引力を打ち消すような相殺項を導入することを現在は考えている。距離の逆数の冪乗のような相互作用を導入することである。この処方は、分子動力学計算において多体効果を再現するための一般的な方法である。また、一方でバリオン質量において考慮に入れる必要がなかった色とスピンの組み合わせに関する相互作用についても、現実を再現するために必要な有効相互作用として働く可能性があると考えている。令和4年度は、これら2点に関する試行計算をいくらか実行することから始めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、あらゆる学会発表等がオンラインになっため旅費が不要となった。これが主な差額の原因である。このため、この未使用額に関しては令和4年度に学会発表等にて使用予定である。
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