研究課題
本研究ではクォークの「色」の自由度の時間発展を含む分子動力学、すなわち「色分子動力学」によって、クォーク=ハドロン相転移を数値的に再現し、明らかにすることを目的としていた。宇宙において高密度のクォー ク=ハドロン相転移が現れる可能性高いのは、中性子星合体やブラックホール形成であるため、相転移の影響が重力波やニュートリノ観測としていかに現れるか検証するためにも、我々の研究は次世代の高エネルギー天文学において中心的な役割を担うものと期待して研究を進めてきた。本研究の主題である高密度状態方程式を得るため、現状の天文観測や原子核実験において得られていた高密度状態における制限を満たすような、クォーク間相互作用に関する結合定数や有効距離に関わるパラメータの最適化を行なった。この計算手法では、色の自由度の時間発展も解きつつ最安定状態を探すといった、クォーク模型を基礎としている。そのため、高密度状況下におけるハドロン相がクォーク相へ状態遷移する様が、一次相転移であるかクロスオーバーであるかに関しても、計算結果として得られる。ただし、我々のこの手法では分子動力学計算を繰り返し行う必要があるため、計算コストが膨大になるという難点があった。本研究を通して、GPUとCPUを用いた並列化を効率的に行うことによって、この難点を克服することに成功した。結果として、現状の天文観測や原子核実験による高密度状態における制限をすべて満たす高密度状態方程式を得ることができた。現状の枠組みでは、ハドロン相はクロスオーバーを経てクォーク相へと遷移していくという結果を得ている。上記の困難のため予定していた研究期間を1年延長することにはなったが、この成果はPhysical Reviewに掲載されることとなった。
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