研究課題/領域番号 |
20K04017
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
塚越 崇 国立天文台, 科学研究部, 特任助教 (20533566)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 惑星系形成 / 原始惑星系円盤 / 電波天文学 / 電波干渉計 / スパースモデリング |
研究実績の概要 |
スパースモデリングによる電波干渉計画像合成ソフトウェアであるpriismの開発・応用研究を進めた。昨年度より継続している原始惑星系円盤の輝度分布モデルを使った画像再現性の評価では、より複雑な輝度分布モデルの組み合わせやを試すと共に、より発展的なCLEANアルゴリズムとの比較も行い、従来の画像合成法よりも高い精度で輝度分布を再現することをより詳しく示した。その結果は電波干渉計に関係する研究会にて発表を行っている。アルマ望遠鏡で実際に取得された観測データへの応用も進めており、アーカイブにある原始惑星系円盤の高解像度データに対し、スパースモデリングの画一的な適用を行ってきた。その初期成果については研究会にて発表を行っており、現在も継続してよりデータ解析を進めている。若い星TTauの原始惑星系円盤に着目した詳細な解析では、スパースモデリングによって作成された高解像度画像から、非常にコンパクトな原始惑星系円盤におけるギャップ構造の発見に成功した。これは、これまで見つかっていた大きいサイズの原始惑星系円盤のみでなく、より小さい円盤でも原始惑星が形成されうる結果を初めて示したものであり、その成果は論文として発表している。その解析の際、疑似天体放射を観測データに埋め込んだ新しい解像度評価手法も提案しており、その有効性についても示すことができている。アルマ望遠鏡の高解像度データの取得及び従来法によるデータ解析も継続して行っており、その一部はすでに論文として発表している。これらは今後スパースモデリングによる画像合成に応用予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパースモデリングによる電波干渉計画像合成ソフトウェアであるpriismの開発・応用を進めた。とりわけ画像作成時におけるパラメータ選定手法の検証を進めており、従来の交差検証手法のほかパワースペクトルを用いた評価方法を新たに取り入れている。また、原始惑星系円盤を想定した輝度分布モデルを使った画像再現性の評価もさらに進めることができている。 アルマ望遠鏡で実際に取得された観測データへの応用も進んでおり、アルマ望遠鏡の最高解像度で取得されたデータに対し、画一的にスパースモデリングの高解像度化を試すことができており、その初期成果について様々な角度から検証を行なっている。特定の天体にフォーカスした科学論文への応用も進めており、若い星TTauの原始惑星系円盤に着目した解析を進め論文としてまとめるとともに、その解析を通して、スパースモデリング画像における新しい解像度の評価手法の提案も行うことができた。スパースモデリングに応用可能な、アルマ望遠鏡の高解像度データの取得・データ解析も継続して行っており、その一部は論文として発表することができている。 関係者との定期ミーティングも継続しており、引き続き開発運用においての情報交換を継続している。ミーティングは主にオンラインでおこなっており、現在の段階でコロナ禍における深刻な影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度からの所属変更に伴い、開発・研究環境をもう一度組み立てる必要が出てきた。これにより今後の研究推進に若干の遅れが発生することが見込まれるが、一早い復旧に努める。復旧後は、アルマ望遠鏡の最高解像度データに対する画一的なスパースモデリングの高解像度化を継続する。現在はまだ初期成果を出した段階であるため、反復的な解析と結果検証が必要である。輝度分布モデルを用いた画像合成の再現性の評価も同時に進めるが、より複雑な構造(非軸対象構造など)にも発展させ、より一般的な振る舞いの評価を行う。さらにノイズ評価手法の確立とノイズによる天体構造再現性の評価も引き続き継続する。またセルフキャリブレーション法のスパースモデリングへの拡張についても開発・評価を進めていく。GPU化も含めたpriismの高速化も別途開発を進める。 得られた結果については研究会やセミナーで発表を行っていく。COVID19感染対策によってオンライン化・ハイブリッド化の対応が進み、国内研究会では比較的安定した発表が可能になってきたが、国際研究会においては時差の関係で参加が難しいものも少なくない。感染状況の情勢を鑑みながら、国際研究会にも極力実態参加を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染対応のため、多くの研究会やセミナーがオンライン化された。特に国際研究会への実態参加は、出入国時における隔離待機期間を考えると現実的に難しかった。これにより出張旅費の執行が滞り、次年度使用が生じることとなった。 次年度使用分は主に旅費経費分として計上されていたものであり、翌年度請求分と合わせて旅費経費として主に使用予定である。しかしながら、国際的な感染状況によってはまだ国外出張が難しいことも考えられる。その場合、国内旅費分を拡充させるか、オンラインミーティングの環境整備を中心に使用する予定である。
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