現在の標準的な銀河形成模型として Cold Dark Matter に基づく階層的構造形成論が広く受け入れられている。このモデルは宇宙の大局的な構造の観測的性質を再現するが、銀河スケール以下の構造における理論と観測の矛盾がいくつか指摘されている。天の川銀河内で観測された衛星銀河の個数が理論的な予測よりも一桁以上少ないことは Missing Satellite 問題と呼ばれている。本研究では、この問題に対し、明るい銀河とダークマターサブハローの衝突過程を考えることで、観測することができないほど暗い矮小銀河の存在を見出す可能性があり、また、ダークマターサブハロー同士の衝突現象は新しい銀河の形成を誘発することを示した。そのため、ダークマターサブハローと矮小銀河の衝突やダークマターサブハロー同士の衝突は Missing Satellite 問題解決への糸口となる物理現象である。近年の観測手法の向上により、矮小銀河同士の衝突現象の痕跡が観測され始めてきた。そこで本研究は、これまで行ってきたダークマターサブハロー同士の衝突頻度の解析を発展させ、Navarro-Frenk--White プロファイルの密度分布を持つホスト銀河の分布関数を基に、ダークマターサブハロー同士の相対距離と相対速度の確率密度分布関数を導出した。これにより、ダークマターサブハロー同士の衝突頻度について知見を得ることができる。ホスト銀河が天の川銀河程度のビリアル質量の場合、ビリアル半径程度の相対距離を持つダークマターサブハローが最も多く、矮小銀河程度ではビリアル半径の 1/3 程度の相対距離を持つダークマターサブハローの確率が最大となることがわかった。一方、相対速度はホスト銀河の質量が減少するほど速くなる傾向となる。これらを用いたダークマターサブハロー同士の衝突頻度の定量的な解析結果を報告した。
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