研究実績の概要 |
本年は、ムチンの抗菌性特性について調査を実施した。抗菌性を確認する細菌として、大腸菌K-12を用い、ハロー法により調査した。実験で使用したムチン懸濁液は,市販の豚由来の胃ムチン粉末を水に懸濁し作製した。まず、300[g/L]ムチン懸濁溶液のみ、300[g/L]ムチン懸濁液にそれぞれ抗菌性作用を示す溶液6種類をそれぞれ調製した。6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液、70%エタノール水溶液、0.3%ヨウ素水溶液、3%石鹸水溶液、30%過酸化水素水溶液、2, 3, 5[g/L]ホウ酸水溶液、に調整したムチン懸濁液を作成した。各懸濁液に正方形の介護服を浸し、抗菌加工を施した。各懸濁液に浸した試料をLB寒天培地の中心に設置し、約25℃で48時間培養し、ハローの幅から抗菌性を確認した。続いて、抗菌性が認められたムチン懸濁液-ホウ酸水溶液の摩擦試験を実施した。各種の懸濁液を1[mL]塗布した綿100%の介護服を測定器の下部鋼板に、人工皮膚 (プロテインPU) を上部の鋼板にそれぞれ設置した。そして上下の鋼板を接触させてから連続的に摩擦を発生させ、静・動摩擦係数を表面性測定器(トライボギア TYPE:18)により測定した。実験条件は、表面性測定機の軸にかける荷重(垂直力)を測定器の初期設定である200[g]とし、往復運動速度3,000[mm/min]、移動距離20[mm]、往復回数100[回]で実施した。 本試験の結果、ムチン懸濁液のみでは抗菌性は示されないことが判明した。抗菌性は、ホウ酸を添加した場合全てで観察された。これらの結果から、ホウ酸を加えたムチン懸濁液に浸した介護服は抗菌活性を持つことが判明した。摩擦試験では、介護服-人工皮膚の間が乾燥状態>水>ムチン懸濁液=ムチン懸濁液-ホウ酸の順に摩擦抵抗が下がっていくことが判明し、ホウ酸を添加しても摩擦低減効果が見られることが判明した。
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