太陽光・風力発電といった間欠性出力電源を主体とする電力システムでは、既存の火力電源だけでは需給調整・周波数変動抑制が困難になる。そのため、需要側の電力調整資源である多数の負荷機器の消費電力を調節し、それが需給調整等に有効に機能する負荷制御方法の開発が望まれている。 本研究では、需要側電力調整資源の調節方法を開発するため、需要側調整資源の潜在量推定、動的量子化器による負荷制御系の開発、需要側調整資源の利用公平性を考慮した自律分散型負荷制御の原理の明確化を行った。 需要側電力調整資源の潜在量推定については、仙台市青葉区の600世帯の一般家庭を対象にアンケートを実施し164世帯から回答を得た。令和4年度は回答結果を用いて負荷制御に関する需要家の特性を分析した。その結果、需要家が空調機や電気温水器を需要側調整資源として系統運用者に提供する場合、約80%の需要家が電気料金の割引率として3~9%を望むこと、調整力提供のため空調機設定温度を変更する際、その変更幅が±0.5℃であれば約96%の需要家が設定温度の変更を許容し得ることなどが分かった。 動的量子化器を応用した負荷制御系については、周波数変動抑制用の基本的制御系を開発した。静的量子化器と比較して制御対象機器が少ない場合でも変動抑制効果が高いが、新たな短周期振動を引き起こすことが課題として明らかになった。令和4年度はこの課題を検討するため負荷制御系を比例制御から積分制御に変更して、動的量子化器による負荷制御の基本特性を分析した。その結果、周波数変動の抑制効果が負荷制御の周期とじょう乱の大きさに依存性があり、それらを考慮した動的量子化器の考案が必要になることが分かった。 需要側調整資源の利用公平性を考慮した負荷制御系については、平均合意アルゴリズムに基づくマルチエージェントシステムに動的量子化器を組み込んだ制御系を考案した。
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