研究課題/領域番号 |
20K04469
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
岸根 桂路 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (20512776)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 4値パルス振幅変調 / 高速 / 集積 / 回路 / 光通信 / ネットワーク / 通信方式 / 微細デバイス |
研究実績の概要 |
AI/IoT/クラウド技術の展開の下で,超高速通信システム伝送装置の高速・小型・低コスト化を目指し,極微細化デバイスの適用が進んでいる.データ通信規模の拡大に伴う通信ノードへの入力チャネル数増大に対し,複数チャネル信号の高速一括伝送で対処可能であるが,伝送チャネル情報や信号監視情報等のデータ管理情報を,データフレーム構成を改変することなく同時に伝送し,その情報に基づき高速ルーティングや帯域制御が可能なフレキシブルで高信頼な高速通信システムの実現を目指している.本研究では,4値パルス振幅変調(PAM4)伝送方式において,データ管理情報を周波数変調技術によりデータフレーム信号に重畳(アドオン)・伝送する方式を提案している.R3年度は,提案方式を実現するために, ①65nm CMOSで構成された受信回路内のプリアンプにおけるオフセット制御機能の有効性の検証と, ②受信回路におけるアドオンされた周波数変調信号の抽出技術の検討を実施した. ①に関しては,PAM4信号を復調する際に,ヒステリシスバッファにより4値の閾値判定を行うが,前段のプリアンプ出力のオフセットレベルがノイズ等の要因により変動した場合に,ヒステリシスバッファが誤動作するという問題があった.そこで,オフセットレベル制御機構を挿入した新たなプリアンプを提案し,65nm CMOSのデバイスパラメータを用いたシミュレーションにより,その有効性を確認した.②に関しては,PAM4信号にアドオンされた周波数変調信号を抽出するための回路構成を検討した.基準周波数からの周波数偏移量に応じて出力電圧が増大する周波数検波回路を採用し,変調信号の抽出に最適なヒステリシスバッファ出力を理論検討により特定した.65nm CMOSのデバイスパラメータを用いたシミュレーションにより,変調信号が抽出可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①PAM4伝送システムの送信回路と同様に,受信回路においても低ジッタ化が必要であり,受信回路内プリアンプにおいて,出力振幅に変化を与えることなくオフセットレベルの調整が実施可能な回路構成を提案した.ポストレイアウトシミュレーションによりアイ開口面積を48%向上可能となることを確認し,復調信号の高品質化につながることを確認した. ②PAM4信号にアドオンされた周波数変調信号を抽出するための回路構成を検討し,我々が以前に提案した高感度周波数検波回路の適用が可能であることを確認した.65nm CMOSのデバイスパラメータを用いたシミュレーションにより,変調の有無で約33mVの検波回路出力電圧の違いが生じることを確認した. ③65nm CMOSにより50Gb/s対応PAM4送受信回路の設計・試作を行った.
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今後の研究の推進方策 |
①R3年度に試作を行った50Gb/s対応PAM4送受信回路CMOSチップのオンウエアプロービングによる高周波測定を実施し,提案したプリアンプの有効性の実機検証を行う. ②アドオンされた周波数変調信号を抽出するための回路構成について,65nm CMOSによる設計・試作を実施し,本研究におけるPAM4信号への周波数変調信号の重畳によるデータ管理情報伝送方式の実現可能性について実機検証を行う. ③PAM4信号への周波数変調信号の重畳によるデータ管理情報伝送において,周波数変調情報(変調波周波数, 周波数偏移量)とデータ管理情報を対応させるために,伝送プロトコルの考案およびエンコーダ/デコーダの構成の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】R4年度において,提案システム回路の高速動作特性を検証するため,65nm CMOSプロセスで試作し,動作検証をすることが必要となった. 【使用計画】①. 設備備品費:65nmトラジスタデザインキット・モデルパラメータを基にしたPAM4送受信装置の開発を実施する(TSMC 65nm:240万円). ②. 学会参加費:国内会議でR3 年度の成果を発表する(1万円×2回).③. 学会参加費:国際会議でR4年度の成果を発表する(ISOCC 10万円×1回).④. 要素回路に関する評価結果と解析に関する論文投稿を行う(IEICE 8万円)
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