研究課題/領域番号 |
20K04506
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
小池 一歩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40351457)
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研究分担者 |
小山 政俊 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30758636)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拡張ゲートFET / 絹フィブロイン / 酵素固定化 / クレアチニンセンサー / 尿素センサー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、透析移行や貧血治療の指標であるクレアチニンと尿素を長期間連続モニタリングできるバイオセンサーを開発することである。拡張ゲート電界効果トランジスター(EGFET)をパッチ式センサーへ応用できれば、皮下の間質液に含まれる健康指標マーカーを連続モニタリングできる可能性がある。しかし、拡張ゲート電極へクレアチニンや尿素と特異反応する酵素を強固に固定化する技術が確立されていない。本研究では、センサーに適した拡張ゲート電極の作製、生体適合性の高い絹フィブロインを用いた酵素固定化技術の開発、センサーのシステム化の検討を行っている。 2020年度に、ガラス基板へスパッタ法でチタン薄膜を成膜し、酸素雰囲気中で熱処理を施すことで、イオン感応性を有する酸化チタン薄膜を形成した。さらに、その表面にシランカップリング処理を施して、スピンコート法で絹フィブロイン薄膜を形成した。絹フィブロイン薄膜はエタノール水溶液に浸漬すると不溶化され、ランダムコイル構造からβシート構造へ変化することを確認した。2021年度は、酵素膜の開発に関して、絹フィブロインを用いたウレアーゼの固定化プロセスの確立を目指し、さらにクレアチニンデイミナーゼの固定化方法を検討した。作製した酵素膜は、比色法で酵素活性を調べた。絹フィブロインへのウレアーゼの仕込み比率を変え、最も安定した酵素膜が得られる条件を探索した。センサー回路の設計に関しては、差動型回路の適用を検討した。その結果、回路動作中の接合温度や周囲温度の変化に伴う電圧ドリフトを大幅に低減することに成功した。さらに、ウレアーゼを含む酵素膜を形成した拡張ゲート電極をリン酸緩衝液に浸し、尿素濃度を0~0.5 mg/mLの範囲で変化させた際のセンサー応答を調べた。その結果、濃度増加に伴って、出力電圧の変化量が0~30mVまで線形的に増加することが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
絹フィブロインを用いたウレアーゼおよびクレアチニンデイミナーゼの固定化方法が確立しつつある。差動型回路を適用したことで電圧ドリフトを低減できたこと、尿素に対してセンサーの感度が得られたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
絹フィブロインを用いたクレアチニンデイミナーゼの固定化プロセスを確立するとともに、酵素膜の耐久性評価を行う。また、差動型回路を用いたクレアチニンおよび尿素センサーの性能を詳細に調べ、その結果を酵素膜の作製へフィードバックする。さらにセンサーの実用化に向けて、血中に含まれる妨害物質の影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍と半導体不足の影響で、年度内に一部消耗品の購入が間に合わなかったため、次年度に繰り越して、試薬の購入に充当する予定である。
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