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2022 年度 実施状況報告書

腎機能低下の早期発見に役立つ「絹フィブロインを用いたバイオセンサー」の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K04506
研究機関大阪工業大学

研究代表者

小池 一歩  大阪工業大学, 工学部, 教授 (40351457)

研究分担者 小山 政俊  大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30758636)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードバイオセンサー / クレアチニン / 絹フィブロイン / クレアチニンデイミナーゼ / 酵素固定化 / 拡張ゲートFET
研究実績の概要

2022年度は、絹フィブロインを用いた酵素(クレアチニンデイミナーゼ)の固定化条件の最適化を行い、作製した酵素膜の耐久性を評価した。さらに、同一チップにMOSFETが複数個実装されている素子を用いて差動型バイオセンサー回路を設計・試作した。
絹フィブロインに対する酵素仕込比率15wt%の酵素膜に対して活性持続性を調べた。酵素膜を乾燥状態で4℃に保たれた冷蔵庫内に保管すれば、1ヶ月経過後も酵素活性が初期の90%以上を保つことが分かった。酵素膜の加熱耐性を調べたところ、70℃・20分間の加熱で80%程度、80℃・20分の加熱で70%程度、それぞれ酵素活性が保たれた。以上のことから、本研究で作製した酵素膜は70℃で加熱殺菌が可能で、かつ、冷蔵保存であれば長期間活性が保たれることが明らかになった。
次に、同一チップにnチャネルMOSFETが2個実装されているテキサス・インスツルメンツ社製CD4007UBEを用いて、拡張ゲート電界効果トランジスター(EGFET)型センサー回路を試作した。2つのnチャネルMOSFETに100μAの定電流を流し、両者のドレイン電圧の差分を出力信号とすることで、周囲温度や接合温度の変化によって生じる温度ドリフトの影響を抑制した。pH8.0のリン酸緩衝液に酵素を固定化した拡張ゲート電極とAg/AgCl参照電極を浸し、クレアチニンに対する電圧応答を調べた。その結果、クレアチニン濃度の増減に伴って電圧が可逆的に応答することが確かめられた。試作したセンサー回路の検出可能な濃度範囲は血清クレアチニンの基準値をほぼカバーする0.006~0.5mg/mLであることも明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

絹フィブロインを用いた酵素の固定化条件を見直した。酵素膜の耐久性を評価し、さらに差動型のセンサー回路を設計・試作した。試作したセンサー回路が血清クレアチニンの基準値をカバーする濃度範囲で感度が得られたことから、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

今後は、絹フィブロインを用いたクレアチニンデイミナーゼの固定化プロセス(酵素膜として最適な膜厚や酵素仕込み比率を最適化)を確立し、差動型の拡張ゲート電界効果トランジスター(EGFET)を用いたセンサー回路を用いて、腎機能指標であるクレアチニンと尿素を長時間連続モニタリングできるか検証する。また、血液や間質液に含まれる妨害物質(アスコルビン酸やグルコースなど)の影響を調べ、妨害物質を含む被検液に対してクレアチニンや尿素を選択的に検出できるか検証する。最終的に、センサーの信号をESP32などの無線通信モジュールを搭載したマイコンを用いて遠隔で受信するシステムの構築を検討し、ウェアラブルセンサーの実現可能性を示したい。

次年度使用額が生じた理由

研究課題を遂行する際に使用している1.5立米の高純度窒素ガスの価格が高騰したため、1.5立米×1本分の価格を下回った残高を次年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] 腎機能指標クレアチニン検出用酵素膜の作製と拡張ゲートFET型バイオセンサー応用2023

    • 著者名/発表者名
      廣芝伸哉,牧野賀成,道端 涼,広藤裕一,小池一歩
    • 雑誌名

      電気学会論文誌C

      巻: 143 ページ: 498, 503

    • DOI

      10.1541/ieejeiss.143.498

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 拡張ゲート電界効果トランジスターを用いたバイオセンサー2023

    • 著者名/発表者名
      廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 雑誌名

      設計工学

      巻: 58 ページ: 84, 87

  • [雑誌論文] MOD法によるガラス基板へのVO2薄膜の成膜と特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      和田英男,扶川泰斗,豊田和晃,小山政俊,廣芝伸哉,小池一歩
    • 雑誌名

      電気学会論文誌A

      巻: 143 ページ: 54, 62

    • DOI

      10.1541/ieejfms.143.54

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MOD 法によるNb, Ta 添加VO2 薄膜における相転移温度の低温化2022

    • 著者名/発表者名
      和田英男,扶川泰斗,豊田和晃,小池一歩,河原正美
    • 雑誌名

      電気学会論文誌A

      巻: 142 ページ: 221, 228

    • DOI

      10.1541/ieejfms.142.221

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Repeated bending durability evaluation of ZnO and Al-doped ZnO thin films grown on cyclo-olefin polymer for flexible oxide device applications2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuyori Oura, Toshihiro Kumatani, Hideo Wada, Masatoshi Koyama, Toshihiko Maemoto, Shigehiko Sasa
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 61 ページ: 101001(7pp)

    • DOI

      10.35848/1347-4065/ac9024

    • 査読あり
  • [学会発表] MBE法でLSAT基板上に成膜したβ相MoO3薄膜のプロトネーション効果2023

    • 著者名/発表者名
      仲井 啓悟,宮本 武,リチャード オンコ,広藤 裕一,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 溶液塗布熱分解法による酸化バナジウム薄膜作製と高感度pHセンサー応用2023

    • 著者名/発表者名
      楯 凱貴,道端 涼,牧野 賀成,広藤 裕一,小池 一歩,廣芝 伸哉
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Sensing of Nitrate Ions Using Graphene-Extended Gate Field-Effect Transistor2022

    • 著者名/発表者名
      Koki Kato, Kento Mimura, Masato Nishiwaki, Takayuki Hasegawa, Nobuya Hiroshiba, Kazuto Koike, Toshihiko Maemoto, Akira Fujimoto
    • 学会等名
      13th International Conference on Nano-Molecular Electronics
    • 国際学会
  • [学会発表] MOD 法によるVO2薄膜の低温成膜および特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      扶川 泰斗,櫻井 航大,山田 一輝,廣芝 伸哉,小池 一歩,和田 英男,河原 正美
    • 学会等名
      第31回日本赤外線学会研究発表会
  • [学会発表] LSAT基板にMBE成長した準安定β相MoO3薄膜のエレクトロクロミック特性2022

    • 著者名/発表者名
      仲井 啓悟,リチャード オンコ,宮本 武,広藤 裕一,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部 75周年記念講演会
  • [学会発表] 溶液塗布熱分解法による酸化バナジウム薄膜の作製とpHセンサー応用2022

    • 著者名/発表者名
      道端 涼,牧野 賀成,楯 凱貴,広藤 裕一,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部 75周年記念講演会
  • [学会発表] 溶液塗布熱分解法を用いたβ相Ga2O3薄膜の成膜とソーラーブラインド光検出特性2022

    • 著者名/発表者名
      豊田 和晃,溝口 達也,宮嵜 愛実,河野 裕太,吉田 諒介,小山 政俊,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部 75周年記念講演会
  • [学会発表] 拡張ゲート電界効果トランジスターを用いたクレアチニンセンサーの作製(Ⅱ)2022

    • 著者名/発表者名
      道端 涼,牧野 賀成,楯 凱貴,広藤 裕一,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] MOD法によるガラス基板へのVO2薄膜成長と特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      扶川 泰斗,豊田 和晃,小山 政俊,廣芝 伸哉,小池 一歩,和田 英男
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] クレアチニンを対象とした拡張ゲート電界効果トランジスター型バイオセンサーの作製と性能評価2022

    • 著者名/発表者名
      道端 涼,牧野 賀成,広藤 裕一,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部第1回講演会
  • [学会発表] β構造三酸化モリブデン薄膜の分子線エピタキシャル成長とエレクトロクロミック特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      仲井 啓悟,リチャード オンコ,廣芝 伸哉,小池 一歩
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部第1回講演会
  • [学会発表] 水系前駆体 溶液とエキシマ光を用いた酸化 インジウム薄膜の低温形成と薄膜トランジスタの特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      駒井 伯成, 大浦 紀頼, 和田 英男, 小山 政俊, 佐々 誠彦, 前元 利彦, 竹添 法隆, 清水 昭宏, 伊藤 寛
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [備考] 絹フィブロインを用いた酵素膜の作製と拡張ゲートFET型バイオセンサーへの応用

    • URL

      https://www.research.oit.ac.jp/oitid/seeds/seeds/seeds-2705/

  • [備考] 糖尿病をはじめとする疾患の早期発見に 役立つ長時間モニタリング可能なバイオセンサー

    • URL

      https://www.oit.ac.jp/oitp/introduction/detail10.html

  • [備考] 大阪工業大学ナノ材料マイクロデバイス研究センター

    • URL

      http://www.oit.ac.jp/japanese/nanotech/

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公開日: 2023-12-25  

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