研究課題
絹フィブロインに対する酵素の仕込み比率や膜厚を変えた酵素膜を作成しセンサーの性能を調べた。その結果、酵素:絹フィブロイン:H2Oを9:60:140の比で調整した水溶液で成膜した約1μmの酵素膜がセンサーに適合していることが判った。また、酵素膜を形成した拡張ゲート電極と絹フィブロイン膜のみ形成した拡張ゲート電極を同時に被検液へ浸漬し、参照電極に対する両者の表面電位の差分を出力することで、被検液の温度変化によって生ずる電圧ドリフトの低減を試みた結果、電圧ドリフトを大幅に低減させることができた。クレアチニン濃度を0→0.01→0.03→0.1→0.3→0 mg/mLと段階的に変化させて電圧応答を調べた。その結果、クレアチニン濃度の増減に対して可逆的に電圧応答すること、長時間連続動作可能であることが確かめられた。ただし、試作センサーの検出可能な下限濃度が、健康な成人の血清クレアチニン濃度の下限値(0.005mg/mL)を完全にカバー出来ていないため、検出可能な下限濃度を現状の半分まで下げる必要がある。次に、血中に含まれる妨害物質であるグルコース、尿素、アスコルビン酸の存在下でクレアチニンを選択的に検出できるか調べた。その結果、クレアチニン濃度0.048 mg/mL(ミカエリス・メンテン定数)で電圧変化量が約30 mVであったのに対して、グルコース濃度1.4 mg/mLで約2 mV、尿素濃度0.43mg/mLで0.5mV、アスコルビン酸濃度0.014 mg/mLで1 mVの変化量にとどまることが判った。このことから、試作センサーはクレアチニンに対して検出選択性が高いことが確かめられた。最終目標であったマイコンと組み合わせたセンサーシステムの構築まで到らなかったが、仮想のアナログ信号をスマホへ出力するシステムは構築できた。
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https://www.research.oit.ac.jp/oitid/archive/2023/seeds/seeds/seeds-2705/