構造物に生じる損傷のうち、金属疲労に起因するものの割合は依然として高く、発生した疲労き裂が進展し続けて重大な事故に至ることのないよう、適切な対策(補修)を施す必要がある。これまでにも、き裂内に腐食生成物が生じると、所謂くさび効果によりき裂進展速度が著しく抑制される場合のあることが報告されていたが、現場における局所的な腐食湿潤環境の実現や制御が難しいことから、実際の補修法として積極的に利用しようとする例は見当たらなかった。本研究の成果はそのような課題に応えるものであり、従来、構造物において負の因子と捉えられてきた腐食現象を、き裂進展抑制のためのプラス因子として利用したところに特徴がある。
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