研究課題/領域番号 |
20K04711
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
竹村 吉晴 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (90634684)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 河口礫州 / 河口砂州 / 準三次元解析法 / 非平衡流砂運動 / 側岸崩落 / 自立高さ / サクション |
研究実績の概要 |
従来の側岸侵食モデルでは,砂礫の安息角に基づいて,側岸からの崩落土砂量および川底への堆積形状が幾何学的に計算される.このため,側岸侵食を説明するために安息角の大きさを調節する等の簡便な手法がとられ,普遍性の高い河岸侵食の解析法となっていない.このため,異なる外力条件に対して,河口礫州がどの程度フラッシュされ,河口部の水位上昇や海域での土砂堆積にどの程度の影響を与えるかについて,工学的に十分な精度で議論できていないのが現状である. 洪水時の側岸侵食は,洪水流により水際が洗掘されることで,不安定化した水面より上方の土砂が崩落し,川底に堆積した崩落土砂が流送されることで,再び崩落が発生するという間欠的なプロセスを経て進行する.このような側岸侵食のプロセスを説明するためには,第一に側岸近傍の三次元流れと非平衡性の高い土砂運動の解析が必要である.その上で,側岸崩落の条件や崩落土砂の流送過程を,側岸の構成材料や層構造に応じてどのように評価するか明らかにすることが,側岸侵食の解析精度向上の筋道と考えている. このために,令和2年度は,申請者の開発した非静水圧準三次元解析法と石礫の非平衡運動を計算可能な長田・福岡モデルを組み合わせた洪水流・河床変動解析法を構築した.そして,間欠的な側岸崩落の発生を考慮するために,側岸の自立高さを考慮した側岸崩落の解析法を開発し,上述の洪水流・河床変動解析法と組み合わせることで,側岸侵食の新しい解析手法を提案した.本手法を,2006年に実施された常願寺川現地実験に適用し,本解析手法の有効性を確認するとともに,サクションの影響を考慮することで,石礫の空隙に細粒分が入り込んだ自然堆積河岸の自立高さを概ね説明できる可能性が高いことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で令和2年度から令和3年度で計画していた研究内容について概ね達成したことから,本研究は当初計画以上に進展しているものと評価した. また,当初計画では,水面より高い位置にある石礫の運動についても,川底も石礫の運動と同様に取り扱い側岸侵食を解析することを考えていたが,これでは間欠的な側岸の崩落により進行する,側岸侵食のプロセスを説明できないとの考えに至り,側岸侵食の解析手法の枠組みを見直した.具体的には,自立高さを考慮した側岸崩落の解析法を開発することで,間欠的な側岸侵食のプロセスを解析することにした.これにより,崩落機構や崩落土砂の輸送過程の評価法について検討することで,粘着性材料からなる側岸の侵食問題に対しても,本手法を応用できる可能性が高まったことも,上述の評価をした理由である.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,引き続き常願寺川現地実験を対象として側岸侵食の解析手法の精度向上について取り組むとともに,本研究の成果を国内外に発信する. また,申請者は本研究と並行して,河口部の地形変化に関する既往論文と実データの収集と分析に取り組んできた.この結果から,河口礫州のフラッシュについて議論する上では,洪水流とともに波浪の影響についても考える必要があるとの結論に至った.このために,波浪解析の工学的な手法として有用性の高いエネルギー平衡モデルと申請者の開発した非静水圧準三次元解析法を組み合わせることで,波と流れの相互作用を考慮した河口部の三次元流れの解析法について検討し,令和2年度の研究成果と統合することで,令和4年度に予定している物部川における河口礫州フラッシュ機構の解析の準備を整える予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は,コロナ禍の影響で出張や現地調査が制限された.このことから,当初計画の予算よりも実質の使用額が小さくなったことが,次年度使用額が生じた主な理由である. 本年度は,当初の計画内容から新たに検討内容を加えている.このため,図面作成等について申請者の所属する研究室の学生に協力を求め,研究を滞りなく遂行する予定である.このために,数値流体解析の可視化に特化した描画ソフトの購入等に次年度使用額を充てる.
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