従来の側岸侵食モデルでは,砂礫の安息角に基づいて,側岸からの崩落土砂量および川底への堆積形状が幾何学的に計算される.このため,側岸侵食を説明するために安息角の大きさを調節する等の簡便な手法がとられ,普遍性の高い河岸侵食の解析法となっていない.このため,異なる外力条件に対して,河口礫州がどの程度フラッシュされ,河口部の水位上昇や海域での土砂堆積にどの程度の影響を与えるかについて,工学的に十分な精度で議論できていないのが現状である.洪水時の側岸侵食は,洪水流により水際が洗掘されることで,不安定化した水面より上方の土砂が崩落し,川底に堆積した崩落土砂が流送されることで,再び崩落が発生するという間欠的なプロセスを経て進行する.このような側岸侵食のプロセスを説明するためには,第一に側岸近傍の三次元流れと非平衡性の高い土砂運動の解析が必要である.その上で,側岸崩落の条件や崩落土砂の流送過程を,側岸の構成材料や層構造に応じてどのように評価するか明らかにすることが,側岸侵食の解析精度向上の筋道と考えている. 令和3年度は,2006年に実施された常願寺川現地実験を対象として,令和2年度に開発した非静水圧準三次元解析法と石礫の非平衡運動を計算可能な長田・福岡モデルを組み合わせた洪水流・河床変動解析法と既存の河岸侵食モデルによる解析結果を比較検討することで,本解析法の有効性について確認した.またその成果を論文に取り纏め学会等で発信した. 令和4年度は,本解析手法を河口礫州のフラッシュや海域の土砂堆積評価に応用するには,波と流れの相互作用の考慮が不可欠との考えに至り,波浪解析に実績のあるエネルギー平衡モデルと本解析手法を組み合わせるとともに,砕波前面に形成されるSurfaceRollerが流れに及ぼす影響の評価手法を開発し現地への適用を行った.またその成果を論文に取り纏め学会に論文投稿した(審査中).
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