研究課題/領域番号 |
20K04852
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
太田 尚孝 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30650262)
|
研究分担者 |
新保 奈穂美 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 講師 (40778354)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ベルリンの壁 / オープンスペース / 都市計画 / 公園緑地 / ダークツーリズム / 伝統記念物保護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベルリンの壁跡地の空間利用が21世紀のオープンスペース整備論に対して批判的示唆を与えると仮定し、当地を誰がどのような考え方に基づき、何が行われ、結果としてどのような空間変容が生じ、何が成果・課題なのかを実証的に明らかにし、マクロ・ミクロでオープンスペース整備論を批判的に考究することである。 2021年度は、当初の研究実施計画に基づくと、「再統一後のベルリン全体の都市空間整備戦略とベルリンの壁跡地の位置づけの変遷分析」「空間利用類型ごとの主体間連携の仕組みや活用実態、現況の課題に関わる事例分析」に取り組む予定であった。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症やウクライナ危機など、渡独が困難な状況が続き、現地でのミクロ調査に基づく実態把握は実施できていない。他方で、コロナ前に実施したベルリンの壁周辺の公園整備に関する事例調査を査読なし学術論文として投稿・掲載された。かつデスクワークのみであるが、ベルリンの壁の跡地利用を考える上でも重要視される地点の再統一後の整備・開発・保全の方針と具体的プロセスについて年度末に学会投稿を行った(現在、査読中)。一連の成果報告の中で、ベルリンの壁跡地を巡る主体間の関りの多面性があらためて明らかになるとともに、結果としての機能分担が行われていることが明らかになった。 2022年度は、渡独が可能になれば、現地調査を行うとともに、文献調査で可能な本研究のキー概念や事例調査、GISでの客観的分析にも注力し、全体としての研究目的に達することに努めたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時点からこれまで、ドイツでの現地調査が行うことができておらず、そのため十分な実態把握ができているとは言えない状況である。他方で、デスクワークのみであり、対象事例を絞ったとしても、関係学会への論文投稿ができるよう研究成果は積みあがっている。そのため、「やや遅れている」と判断できる。なお、2022年度においても現地での研究実施可能性がいまだ不透明であることから、場合によっては研究期間の延長もありうると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、2021年度でデスクワークでも一定の事例調査が可能であることがわかったため、2022年度前半ではベルリンの壁跡地の広域利用の具体的事例である、MauerwegやGruenes Bandの整備計画や実態把握を文献調査をベースに行う。 加えて、ベルリンの壁跡地に関わるGISでのマクロ調査を行う。幸いにして、ベルリン市は、比較的GISデータをオープンデータ化しており、必要最低限ではあるが、ベルリンの壁跡地に土地利用などの概況は整理できるのではないかと考えている。 また、ドイツにおけるオープンスペースFreiraumとは何かの解明は本研究の中でも重要であると思われるため、この概念整理にも努めたい。 その上で、国内外の状況が許せば、2022年度の後半に現地調査を行い、関係者へのインタビュー調査や、利活用の動向を調査したい。 過年度と同様に、研究成果は学会論文への投稿を積極的に行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、ドイツへの渡独を前提にした調査計画を立てている。しかしながら、研究申請時と現在の世界情勢は全く異なり、渡独自体が困難となった。そのため、旅費の繰り越しが続いている。また、現地調査に関連した経費も未使用のままである。 2022年度に渡独が可能であれば、当初計画よりも少し長期にドイツに滞在することも考えており、そのために繰越額も合わせた予算使用がありうると考えている。あるいは、現状では、文献調査が主とならざるをえなく、必要資料や必要体制の構築のために追加で予算が必要になるとも考えている。
|