研究実績の概要 |
最終年度となる2023年度はコロナ過の影響もあり、当初の研究計画を1年延長した形で行った。ベルリンへの渡航を行い現地調査も実施し、これまでの文献調査の成果を含めて研究テーマに直接的に関わる研究成果の論文化もできた(太田尚孝・新保奈穂美(2024)「ベルリンの壁跡地の広域的利活用と持続可能性:「壁の道」及び「グリーンベルト」を事例に」兵庫県立大学環境人間学部研究報告, 26, 15-24 ※査読有)。また、より広い研究成果の社会還元として2024年3月に、「負の遺産を未来への礎に:ベルリンの壁跡地を活かした緑空間」「Using of vacant land for urban gardening towards a sustainable future - Case studies from Berlin and Kobe」と題した発表を共同研究者が行い、国際的観点からの歴史遺産の空間整備のあり方を考察できた。 最終的に4年間に渡った研究では、ベルリンの壁の跡地をどのような考え方で再整備したかを政策文書から明らかにし、点的(例:旧国境地点のチェックポイント・チャーリーの再整備計画)、面的観点(例:ベルリンの壁跡地に沿った形での歩行者・自転車道整備計画)から実態に即して分析できたことはオリジナリティが高く、従来のわが国にはない研究成果と言える。具体的には、当初から壁跡地を全面的に残すのでは決してなく、トライ&エラーや時代環境の変化に敏感に対応していたこと、それでもなお大きな計画があってこその本格的な個々の事業化であったこと、ベルリンの壁の跡地と言う痕跡は残しつつも用途は柔軟に変わっていること、などが明らかになった。 予定よりも数は少なかったとはいえ、査読付き論文も複数編執筆できた。他方、コロナ過により渡航が大幅に制限され、当初予定していた現地調査での詳細分析はできなかった。
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