研究課題/領域番号 |
20K04981
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松井 猛 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (50512505)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチエージェントシステム / 社会シミュレーション / 不完全情報 |
研究実績の概要 |
近年の情報通信技術の発達により,より広範囲で迅速に,詳細で時間分解能の高い社会経済データが収集できるようになりつつある.これらの大量かつ大規模な実データを用いて,事業に役立つ知見を導出あるいは社会経済の問題解決や,業務の付加価値向上を目的として,社会経済現象の背後にあるメカニズムを理解する分析手法の必要性は高まってきている.自然現象と異なり,社会現象には再現性はないが.金融工学や経済学をはじめとして,現象を説明するための確固たる理論体系は存在し,それらの理論や実際の現象と整合する結果を示すことができるシステムがますます重要になってきている. このような背景のもと,ソーシャルメディアを対象として実際のソーシャルメディア上の人間関係により近い明確な境界を持たないコミュニティ抽出を行い,得られたネットワーク情報を可視化することにより,データを解析する際に妥当な結論を導き出すことを支援する手法を提案するともに,小規模の実データを用いて有用性を検証した. さらに,不確実なデータや情報に基づいて複数の意思決定者が意思決定を行わなければならない不確実性を含む意思決定問題に対して,問題に含まれる不確実さに起因する損失を考慮したい状況(例えば,不確実な需要に対する生産する製品の不足や余剰による損失が無視できない場合など)の下で,意思決定者の選好および人間としての判断のあいまい性を反映した満足解を導出するモデルの構築を行った. また,関連分野への研究成果や応用も得られ,国際会議での発表および学術雑誌への掲載がされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより,研究活動および環境に大きな影響が及ぼされたため,移動制限処置に伴い,各種学会への参加,情報収集などを行うための調査や連携研究者との打ち合わせがオンラインとなり,満足に行うことが困難であった. また,当初予定していた大規模データを実用的な計算時間内で処理可能となるアルゴリズムの構築およびシステムへの開発・実装が遅れている. 一方で,小規模の実データを用いた有用性の検証,不確実性を含む意思決定問題に対する意思決定者の選好を反映した満足解を導出するモデルの構築を実施したため,計画よりやや遅れていると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
実用的な不完全情報下での社会シミュレーションモデル構築を目指して,大規模データを実計算時間内で処理可能となるアルゴリズムの構築およびシステムへの開発・実装を行う予定である. また,複雑に依存しあう社会システムにおける様々な意思決定は,広い意味での不確実性の下で,大規模多変数でしかも相競合する目的を有する複数人の意思決定者の意向を考慮して行わなければならないことに着目して,マルチエージェントシステムとしてモデル化するとともに,経済・産業界の現実問題に対し,開発した方法論の応用を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会および国際会議参加,連携研究者との研究打ち合わせが新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより,参加の見合わせもしくはオンラインとなったため,旅費が不使用となり次年度使用額が生じた.次年度使用額については,論文投稿料および開発用計算機の購入に使用することを計画している.
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