研究課題/領域番号 |
20K05011
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
細田 聡 関東学院大学, 社会学部, 教授 (60270542)
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研究分担者 |
小山 弘美 関東学院大学, 社会学部, 准教授 (00732801)
元木 誠 関東学院大学, 理工学部, 教授 (20440282)
永田 真弓 関東学院大学, 看護学部, 教授 (40294558)
施 桂栄 関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (40370192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域包括的危機管理モデル / 地域コミュニティ / 情報送受信 / インクルーシブ防災 / 災害救助用ドローン |
研究実績の概要 |
本研究は、都市型限界集落における地域コミュニティが自律的に包括的危機管理を実施する先進的モデルケースを構築することを目的としている。2020年度に近隣自治会に対し、防災訓練における工夫や課題など自治会の防災体制などの現状等に関する面接調査を行う予定であった。しかし、COVID-19感染拡大に伴い面接調査を断念した。これの代替として以下の2アプローチにより具体的に研究を進めた。 1)2018年度および2020年度に近隣自治会が実施した防災に関する質問紙調査データを取得し、これを分析した。その結果、2018年度と比較して2020年度では防災用品などの準備状況は向上していた。その一方、災害情報サービスへの登録率およびスマートフォンの所持率が低いことが明らかとなった。 2)本研究では、2023年度にドローンを活用した地域での避難誘導や安否確認ができるシステムの構築を計画している。これの理解を得るため、近隣中学校の協力を得て、災害救助用ドローンのデモンストレーション飛行を実施した。これにより、地域住民や教職員にドローンの積極的活用の有効性を示すことができた。 本年度の研究において、地域コミュニティにおける防災上の脆弱点の一つが、緊急時での地域住民の情報送受信にあることが見出された。これは現代の危機管理において喫緊に解決すべき課題であり、これが具体的に判明したことに意義がある。 今年度の研究により、地域コミュニティにおいて被害状況の確認や住民の安否確認にドローン活用は有効であることの理解を得られた。しかしながら、これを活用するためには、避難行動者の情報をいかに把握・集約し、的確な情報をどのように発信するかといった重大な課題も抽出された。本研究が目指す誰一人取り残すことなく避難可能とするインクルーシブ防災を実現するために、克服すべき課題が明らかになったことは重要な成果であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染拡大に伴い、2020年度に予定していた地域コミュニティに対する防災体制などの現状等に関する面接調査を実施することができなかった。そのため、近隣自治会および小学校・中学校との連絡協議会等において計画の変更を協議し、実施予定であった面接調査の代替措置として、対象地域の近隣自治会から提供された2018年度および2020年度の「防災意識アンケート」(それぞれn=629、n=681)のデータを分析することとした。その結果、知人宅あるいは自家用車の利用による避難所以外での避難が可能とした割合は86%であったこと、居住地の耐震対策や防災用品の準備など対象地域の防災対応は充実する傾向にあることなどが認められた。その一方、停電時の給電方法、災害情報サービスへの登録、情報取得端末の保持については準備不足であることも判明した。 また、本研究では、2023年度に、災害時でのドローンを活用した避難誘導や安否確認が可能なシステム構築を計画している。これの主体は、地域住民や地域内の小学校・中学校の教職員であり、ドローン操作およびこれを活用した被災状況や避難行動者からの情報把握・集約、避難行動者への的確な情報発信を行うなど、危機管理の当事者となることを想定している。この当事者性を涵養するために、近隣中学校の協力を得て、災害救助用ドローンのデモンストレーション飛行を実施することができた。 しかしながら、リスク認知から対応行動に至るメンタルモデルの構築に資するデータを面接調査で得ることができなかったことから、全体として「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度上半期に、前年度実施予定であった、地域住民に対して防災訓練における工夫や課題など自治会の防災体制などの現状や、自己のリスク認知・避難行動などの防災意識に関する面接調査を行う。これに基づき、下半期に自治会範囲における居住世帯への質問紙による全数調査を行う。この調査では、地域住民の防災ニーズの把握、避難を開始するトリガー、当事者としての対応行動可能性、携帯電話など情報送受信機器の利用状況などについて明らかにする。これに加えて、災害時要援護者においては、事前にどのような避難準備が必要か、発災時にどのような援助を要請したいかなどについて面接調査を実施する。 2022年度は、リスクマネジメントを地域コミュニティに導入する。リスク評価では、ドローンを活用し地域特有のハザードを特定する。これに続いて、住民自身が事象重大性と発生確率を推定しリスク程度の判定を行う。リスク対応では、地域住民がリスク評価に応じて対策を立案する。この判定結果・対策立案について本研究課題実施者が評価し、地域住民へのフィードバックを行う。そして、評価結果について自治体、消防署、病院など関係諸機関とリスクコミュニケーションをとり、リスク低減に向けた解決策を図る。 2023年度は、クライシスマネジメントを地域コミュニティに展開する。また、災害時にドローンを活用する際の情報送受信システムを構築する。併せて、ドローンを活用する際の必要な体制や連絡系統の整備を行った上で、小中学校で実施される避難訓練に地域住民も参加し、これを活用した誘導・避難の実証実験を行い、地域のクライシスマネジメントの実効性を検証する。また、避難所での各種感染症対策、人工呼吸器など装着した乳幼児や在宅療養者、感染症罹患者など避難困難者への援護方法を考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に実施予定であった調査が中止となり、調査のための旅費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。こちらについては、2021年度に実施する地域住民を対象とした面接調査と質問紙調査および取得したデータの入力・解析のための費用の一部として使用する予定である。
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