研究課題/領域番号 |
20K05054
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
小西 智久 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (40559960)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 畳み込みニューラルネットワーク / ディープラーニング / 合成開口レーダ / COSMO-SkyMed / ALOS-2/PALSAR-2 |
研究実績の概要 |
近年、豪雨や地震に伴う土砂災害が数多く発生している。早期の被災状況把握に向けて、天候や昼夜によらず地表面の状態を観測可能な人工衛星搭載の合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar: SAR)の活用が期待されている。本研究では、画像認識で成果を上げている深層学習を用いて災害前後のSARデータから土砂崩壊地を抽出することを目的とする。さらに、波長や観測方向および観測モードの異なるSARデータを用いることで土砂崩壊地抽出に適した手法を確立する。 2020年度は2018年に発生した北海道胆振東部地震の発生前後のCOSMO-SkyMedおよびALOS-2/PLASAR-2データにCNN(Convolutional Neural Network)を適用して土砂崩壊地抽出を行った。SARデータの前処理としてマルチルック処理と国土地理院の基盤地図情報数値標高モデル10mメッシュ(標高)データを用いたオルソ補正、校正処理を行った。教師データと検証用データは国土地理院が公開している斜面崩壊・堆積分布図から作成した。土砂崩壊地抽出には全層畳み込みニューラルネットワークの一つであるU-Netを使用した。U-Netには複数の方法で切り出した256×256画素の小パッチ画像を入力して学習を行った。学習に使用していないテストデータを用いてF値の比較を行った結果、小パッチ画像を切り出す際の適値を求めることができた。U-Netによる手法ではSAR特有の幾何学的な歪みやスペックルノイズの影響をあまり受けることなく土砂崩壊地抽出を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の計画通り、北海道胆振東部地震の発生前後のCOSMO-SkyMedおよびALOS-2/PALSAR-2データにCNNを適用して土砂崩壊地抽出を行い、その有効性を検討した。解析用のCOSMO-SkyMedデータの入手が9月になった事もあり、まずは過去の洪水災害前後のCOSMO-SkyMedデータを用いてCNN手法の選定を行った。その結果、U-Netと従来手法との比較を行い、その有効性を確認することができた。続いて、北海道胆振東部地震前後のCOSMO-SkyMedデータにU-Netを適用して土砂崩壊地抽出を行った。ミニバッチサイズやストライドのサイズなどを調整して土砂崩壊地抽出におけるパラメータの最適値を求めた。国土地理院が公開している斜面崩壊・堆積分布図から作成したテストデータを用いて検証を行い、F値70.9%を得た。北海道胆振東部地震前後のALOS-2/PALSAR-2データによる土砂崩壊地抽出においてもU-Netを適用してF値79.9%を得た。これらの結果から提案手法による土砂崩壊地抽出はXバンドおよびLバンドSARデータに対して有効であることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に十分に検討できなかったCOSMO-SkyMedデータとALOS-2/PALSAR-2データによる土砂崩壊地抽出結果の比較・考察を実施する。そして、当初計画通り平成30年7月豪雨による広島県の土砂崩壊発生前後のALOS-2/PALSAR-2にCNNを適用して土砂崩壊地抽出を行う。また、国内外の土砂災害についても同様の解析を行い、CNNへの学習データを増やすことで抽出能力を向上させる。さらに抽出した崩壊地データと教師データを画素単位で比較しその抽出精度を明確に示す。一方で、教師データを目視判読で作成するには膨大な時間と労力が必要であるため、CNNに前年度作成した教師データを学習させて、PleiadesやSPOT-7等の高分解能光学センサデータから土砂崩壊地抽出用の教師データを作成する手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたCOSMO-SKyMed衛星画像の購入を3シーンから2シーンとした。また、新型コロナウイルス感染症の影響により旅費および人件費が発生しなかったため次年度使用額が発生した。今後は衛星画像の購入、国際学会参加費を中心に支出する予定である。
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