既存軽水炉構造材料の開発研究は、高信頼性と高安全性を有するオーステナイトステンレス鋼や低合金鋼などの鉄鋼材料を中心に行われてきたが、近年になって、特異な材料特性を有するハイエントロピー合金を原子炉構造材料へ応用するための基礎研究が活発化してきた。照射下におけるFCC型構造材料中には、フランク型転位ループや積層欠陥四面体といった積層欠陥型の照射欠陥が形成することで、材料の照射硬化や照射脆化を引き起こす。本研究では、MnおよびNiの濃度を変えることで積層欠陥エネルギーを制御し、耐照射特性を向上させることに成功した。これにより、次世代の新規炉構造材料開発の道筋の一つを提案することができた。
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